お兄ちゃん。《Ryohei.A》 (ページ9)

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『どこで食べましょうか。屋上とか？』

さすが深澤先輩

一緒に廊下を歩くだけで女子の視線を感じる…

「あー屋上はやめとこう。多分今頃阿部が告白されてるだろうから」

『えっ、また？』

「そ。いいかげん彼女の一人くらいつくればいいじゃんって言ってんだけどさ」

『あー亮平はそういうのに興味ないですからねー』

いままで数えきれない女子に告白されてきた亮平は、なんとまだ付き合ったことがない

なんで彼女をつくらないのか、ちゃんと理由を聞いたことはないけど

多分興味がないだけなんだろう

『えと、ここどこですか？』

先輩と喋りながらついたのは、誰もいない教室

「ここ、昼休み誰も人が通んない穴場なの。知ってんのは俺と阿部と佐久間だけ！今日は特別にAちゃんも招待するよ」

秘密基地を見るようなキラキラした目をする先輩がなんだか可愛くて、クスッと笑ってしまう

ほらここ、と自分の隣の席を指す先輩

その隣の席につけば、なんだか先輩の同級生になったみたい

「高校には慣れた？」

『はい！毎日楽しいです。今日はちょっと遅刻しかけましたけど…笑』

「ふはっ笑、だと思ったよ。だって阿部わざとおいてってたもん、Aちゃんのこと」

なっ、やっぱわざとなのか…

帰ったら文句言ってやろ！

でもお弁当いつも通り美味しいから許してあげようかな、なんて思ったり

「Aちゃんにとって阿部ってどんな存在なのよ」

『えっ、急になんの質問ですかそれ笑』

「いいからいいから」

『…尊敬してる人、ですかね』

「尊敬？」

『はい。なんでもできて誰にでも優しくて。人としてすごく尊敬してるんです』

『まぁその分、そんな兄と比べて私は…ってちょっと劣等感感じちゃうときもあったりするんですけどね』

私には別にこれといった長所もないし、亮平と比較されることも多くて、それでへこむことなんかもしばしばあった

「劣等感、ね」

少し考え込んだ先輩は微笑んでいった

「Aちゃんにはさ、人を笑顔にする力があると思うんだ。だって俺、今Aちゃんといて楽しいもん」

『えっ…』

胸がドキッとなったのがわかる

冗談でも本気でも、深澤先輩にそんなことを言ってもらえるのは嬉しすぎる

「だからさ、自分に自信持って？Aちゃんはね、魅力でいっぱいの人なんだから」

昼休みの終わりを告げるチャイムが、静かな教室に響いた