【3】 ページ3
『いらっしゃいませ』
声をかけて来たのは、黒いエプロンに真っ白な肌、ぷるんとした分厚い唇の男性
ここの店員だろうか
『初めてですよね?』
「あ、はい…たまたま見つけて」
『そうでしたか、こんな時間までお仕事ですか?』
「まあ…残業で…」
『お疲れ様です。よければゆっくりご覧ください』
後これも、と渡された一杯のコーヒー
一口飲むと疲れた体がコーヒーで生き返る
言われた通り、ゆっくりと店内を見てみると、ここはどうやらアンティークショップのようだった
小物から家具やらあり、興味が湧く
『実は、これ全部俺が作ってるんですよ』
「え、そうなんですか?」
『自分で言うのもアレなんですけどね』
「凄いです、こんなに」
『なんか照れるわ…』
2人で笑っていると、私はとある物と目があった
窓際に座った2体の人形
一体は黒い羽と黒い服を着た悪魔
もう一体は白い羽と白い服を着た天使
『それ、2体でセットなんです。最初はバラバラで売ろうかなって思ったんやけど、どうしてもセットがええってなって。2体を見とると、一緒がええ!って言うてきてるような気がして』
「そう…なんですね…」
…欲しい、2体を見ていると、心の中でそう強く思ってしまう
ただお金がそこまで無い
…また来るしか……
『…もし良ければ、お金は頂きませんよ』
「えっ…?でも…」
『その代わり、2人の事を大切にしてあげてください。きっと、お客さんの事を幸せにしてくれると思いますよ』
「いいんですか…?」
『もちろん』
私は2体の人形を手に取った
『良ければ、名前付けてあげてください』
「分かりました。ありがとうございます…!」
『いいえ、お構いなく。また来てくださいね』
「もちろんです」
私は渡された紙袋の中に人形を入れ、店を後にした
『行ってらっしゃい。2人とも』
75人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:火華 | 作成日時:2024年1月6日 16時