検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:6,098 hit

水も滴る私たち(下) ページ6

沈黙を破ったのは、私でも彼女でもなかった。

「誰ですの!? そこにいるのは!」
「沈め!」
「あぶ!?」

大神田校長の声に驚く暇もなく、私の頭は東堂シオンによって再び水中へと沈められた。
ゆっくりと目を開けると、東堂もまた水中でじっとしている。
浮いていってしまう私を捕まえて胸の中に抑え込まれた。柔らかな感触が頬に当たる。世の中って不公平だ!

「誰もいませんわね……」

世界中の何よりも、東堂の心音が近くにある。
深い蒼の世界で、ふたりきり。

「……ぶはっ」
「もう行ったようだな」
「いきなり沈めるな!」
「だから声はかけただろう」
「そんな素早く反応できるか!」

私が梯子に辿り着く前に、東堂はそそくさとプールサイドに上がってしまった。
くそぅ、私はそこからじゃ上がれないんだぞ。

「ほら、」
「?」
「手を貸せ」
「……うん、」

両腕を掴まれて勢いを借りる。重たい身体をやっとの思いで地上まで引き摺った。
ブラウスもスカートも張り付いて気持ち悪い。
東堂を見やると、身体のラインも何もかもがくっきりとしていた。

「あのさ、東堂」
「なんだ?」
「中学生で黒はちょっと攻め過ぎじゃない?」
「み、見るなバカ!」
「見るなと言われても、スケスケですし」
「わ、私は白か黒しか着けない主義なんだ!」

そう言って、彼女は濡れたままの身体でベストを被ってしまった。
もう少しからかいたかったのに、残念だ。

「お前はそこで待っていろ」
「どこ行くの?」
「タオルを持ってきてやる」

素足に革靴だけ履いて、東堂は再びフェンスを飛び越えた。白くて長い脚が夏の光に照らされて、レフ板みたいに眩しい。
水も滴る良い東堂が学園を歩けば、女子生徒の悲鳴が上がる。それはプールサイドまで聞こえてきた。
そうして自然と集まってきたタオルを抱えて彼女が戻って来るのはきっと五分も経たないうちだろう。
私は何とか乾かしてやろうと、熱い地面に大の字になった。
人生とは悪足掻きである。

蜂蜜色の私たち(上)→←水も滴る私たち(中)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
設定タグ:プリパラ , 東堂シオン , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うぇーい - 東堂マジック 超納得。シオン様美し過ぎますわー♪ 確かに足、白くて長いですよね。 作者さんの表現がすご過ぎて超ーーーーーーーードキドキしてます。素晴らしい表現のシオン様をもっと見せてください。応援してます! (2018年11月28日 17時) (レス) id: f392f14748 (このIDを非表示/違反報告)
ももいろぱんだ(プロフ) - 桜庭ひとみさん» ひとみさん感想と応援ありがとうございます! いっちば〜ん! と言って頂けて嬉しいです。ドキドキお届けできるようにがんばります! (2018年2月8日 22時) (レス) id: c393640eca (このIDを非表示/違反報告)
桜庭ひとみ(プロフ) - 私が今まで読んだ夢小説の中で1番面白くてドキドキしました!更新お待ちしています!頑張ってください! (2018年2月8日 0時) (レス) id: 951df48c07 (このIDを非表示/違反報告)
ももいろぱんだ(プロフ) - マコトさん» マコトさん:感想ありがとうございます!かっこいいけど可愛いシオンちゃんを目指しているので、ドキドキして頂けてすごく嬉しいです。ゆっくり更新ですが、また覗きに来ていただけると嬉しいです! (2018年2月2日 20時) (レス) id: c393640eca (このIDを非表示/違反報告)
マコト(プロフ) - 読みながら本当にドキドキしました!ももいろぱんださんのシオン様とても素敵です! (2018年2月1日 1時) (レス) id: 68b3b2fabf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ももいろぱんだ | 作成日時:2017年10月10日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。