超人ちゃんと凡人ちゃん

初夏のある日の私たち（中） ページ11

「いただきます」

両手を軽く合わせてからお弁当箱を開ける。今日は大好きなチーズちくわフライなのだ。これだけで、今日半日耐えた甲斐があるというものだ。チーズちくわフライは偉大だ。

「珍しいな、弁当か」
「ふふふ、褒めたまえ」

東堂はじっと考え込んだと思うと、急に手を伸ばしてきた。その間0.05秒。体感である。私が避けきれるはずもなく、爪楊枝に刺さったマイスウィートが拐われた。

「あー！ 私のチーズちくわフライ！」
「ん、美味いな」
「刺して揚げるだけだよ。褒めるならもっと卵焼きとかさぁ……」
「そうか」
「あーーーっ！ 食べていいとは言ってない！」

こ、こいつ、マイスウィートチーズちくわフライだけに留まらず甘く焼いた卵焼きにまで手を出しやがった！
咀嚼して飲み込むと、東堂は満足そうな顔をした。こっちは貴重な食料が奪われて不満なんだが。

「テストの結果は良くなかったと見える」
「い、いきなりなに」
「やはり顔に出る」
「うっ」

何故だ、何故なんだ。お弁当をつまみ食いしただけで、どうして私のことが……
ジワリと額に滲む汗。見つめ合った先の、東堂の目が細められる。

「テストの結果が悪い、小遣いが減らされる、昼食代も惜しい、弁当を作る……と言ったところか」
「人のことを勝手に読むなーっ！ あとオカズ返せ！」
「講師料だと思え」
「全然ダメだったじゃん」
「そこまでは私も読めなかった、すまんな」
「謝られると逆に傷つく」

自分でもわかるくらいにムスッとしながらタコさんウインナーを口に運ぶ。
本当にどうしてか、東堂は少しだけ申し訳なさそうな顔をする。そもそも悪いのは私の頭と要領なのに。
それに国語はそこそこ良かったのだ。これに関しては素直にお礼を述べるべきですらある。

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