・ ページ9
曲が流れ始めると同時に目を閉じた。
そして、反芻する。
Aは今俺の恋人。
ずっと一緒にいたいと思うほど愛おしい存在。
Aと過ごす時間が幸せで、
ずっと触れていたいと願う。
言い聞かせるように頭に言葉を浮かべる。
あれ…これ、
そこで、気づく。
こんなの、俺、
いつも思ってることじゃん。
微かにシャツを引かれる力を感じて、
それに合わせて目を開ける。
目の前に愛おしい人。
壁に左手をついて、右手はその頬に添える。
ゆっくりと顔を近づけ
おでこに小さなキスを落とす。
顔を離せばこちらを見て幸せそうに微笑む。
それに釣られて俺も柔らかく笑う。
あぁ、なんて愛おしいんだろう。
この気持ち、何としてでも伝えないと。
左耳に顔を近づけ、耳元で
「사랑해(愛してる)」
そう呟いた。
再び、俺より随分と低い視線に合わせて、
顔を離す。
また、きっとあの笑顔で俺を見つめてる。
そう確信してその表情を見るけど、
さっきとは違って、
目には悲しみが溢れていて。
涙、は零れてないのに、まるで泣いているかのよう。
なんだか、急に心配になって、
その華奢な肩を引くと、
ぎゅっと抱きしめた。
どこにも、いかない、よな？
美しく儚いその存在。
まるで、消えてしまいそうに感じた。
俺がぎゅっと抱きしめる力を強める。
すると、ゆっくりと俺の背中に回る腕。
その力は弱々しく、俺の不安は消えない。
肩に手を置き、少し距離を離すと、
今度は両手でその頬を包む。
まだ、瞳は悲しみで溢れたまま。
あぁ、どうか、消えないで。
ずっと、俺の元で、
どちらからともなくゆっくり目を閉じる。
2人の距離が近づいて、
もう、少し。
あと、少し。
愛おしい人、ずっと俺のもので。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 436人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もなか | 作成日時：2022年10月4日 12時
