紅一点の日々２【TREASURE】 (ページ8)

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「ルトヤ、頑張れよ」

「ヒョンソギヒョン、」

「緊張せずにお前のままやってこい！」

「はい、ありがとうございます」

優しく声をかけてくれるヒョンソギヒョンと、
気合を入れるように今欲しい言葉をくれるジフニヒョン。

2人に肩を押され、Aの元へ向かう。

ほんとに、良いヒョンたちに恵まれたな、
スタンバイに向かう短い時間でそう思う。

『ハルト、緊張してる？』

『いや？』

『してんのAやろ？』

『さっすが、ウリハルトは頼もしいね』

『当たり前』

本当は緊張してるくせに。
Aの前だとカッコつけてしまうのはいつものこと。

クラブのセットだけど、
スタンバイ位置は壁際。

Aが壁側で俺が近い距離でその前に立つ。

別に閉ざされた空間でもなんでもないのに、
目の前にはAしか見えなくて、
なんとなく2人きりなんじゃないかと
錯覚しそうになる。

『ねぇ、ハルト？』

『ん？』

『今から私のこと、ほんとの恋人だと思ってね』

『は？』

『難しいかもしれないけど、その方がきっと良いのが撮れる』

『私も今からハルトのことは愛しくて仕方ない恋人だと思う』

『……分かった』

もうすぐ撮影が始まる、
そのタイミングで俺を下から見上げてそう言ったA。

一瞬、その言葉に動揺してしまったけど、
真っ直ぐで真剣な目を見ると、
俺も切り替えないと、そう思った。

「始めてください」

「はい、では音楽流しまーす！」

監督の合図で流れ始める音楽。

あぁ、始まる。