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「コンセプト変えるとかできないんですか？」
「絡みのシーンじゃなくて他の、とか」
横で同じように聞いていたジフニヒョンが、
ひょこっと顔を出してそう言う。
やっぱり考えは俺と同じみたいで、
この思いがけず舞い込んだ阻止の機会を
できる限り逃さないよう仕向けてるのが見え見えだ。
「いや…、それが監督はこのシーンに力を入れてて…」
「あー…」
「このシーンを変えるのは、あまり選択肢にないかと…」
「そうですか…」
その言葉を聞いて、
さっきの空気の変化を思い出す。
そうだ、さっき、監督の雰囲気で
がらっと空気が変わったじゃないか。
そりゃ無理だよな、
少しだけ見えた希望だけに、
すごく残念に思えた。
「ハルト、お前がやれ」
「え？」
突然後ろから聞こえた
聞きなれた少ししゃがれた声。
その声に俺たち3人はばっと後ろへ振り向いた。
目に映るのは
未だ目を合わせれば、緊張感が走るあの人。
「社長…！」
「俺はもう社長ではないよ」
「それに、聞こえただろ？」
「え？」
「ハルトだ、お前がやれ」
そこに立つのはヤンサ元社長。
いつからそこにいたのか、
何故ここにいるのか、
聞きたいことは沢山あるのに、
まるでそれは受け付けないかのように、
俺の目を真っ直ぐに見て言う。
「俺、ですか？」
「そう、お前だ」
「いや、でも、そんな急に…」
「できないのか？」
少しだけ下がった声のトーンに
俺を試すような目。
その姿に俺はどきっとする。
あぁ、もう、何度この目を見てきたか、
もはや懐かしさを覚えるほど、
その目には見覚えがある。
韓国での評価の時、宝石箱の時、
俺がなにかマイナスな言葉を言おうとすれば
すぐに、その目を向けられた。
そして、「できるのか」「できないのか」と。
もう、そう聞かれてしまえば、答えは1つで、
「できます」
そう、答えるしかなくなってしまうんだ。
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作者名：もなか | 作成日時：2022年10月4日 12時
