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「A、なんで、」
「いい、ほんとに、何も無いから。私は大丈夫だから」
「そんなわけっ！……っ」
さっきのアイツに怒りが収まらない俺は、
Aの肩を掴んで、
少し強めに揺らした。
でも、Aは少し下を向いて、
そんなことを言うから、
つい、怒りそのままに強い口調で責めようとしてしまった。
その時、視界に写った肩が
小刻みに震えていることに気づいて、
あぁ、俺はなんてことを、
その瞬間肩を引いてそのままぎゅっと抱きしめた。
「ごめん、」
「ううん、イェダムは悪くないよ、」
「ううん、俺が悪い。ずっと傍にいるって決めてたのに、」
「違うよ、自分で、自分を守らないといけないんだから……」
ぎゅっと抱きしめて、
背中を摩るように撫でる。
その言葉の後、
Aは黙り込んだ。
ただ、その代わり、
小さくしゃくり上げる声が聞こえて、
俺の胸は締め付けられた。
苦しくて。
泣いてるの、
見たことなかったから、余計。
どれだけ怖かっただろう、
なんで俺は守ってあげられなかったんだろう。
後悔でいっぱいだった。
しばらくすればその声は聞こえなくなる。
どのくらい経ったか、
頭の中でぐるぐると考えていた俺には分からなかったけど、
多分、ある程度時間は経っていただろう。
そこで、やっと少し距離を離した。
視界に映るAの顔。
目は涙目で、少し赤い。
乱れた制服もそのままで、
俺の胸はまたぎゅっと締め付けられた。
「あいつに、何、された？」
「……別に何もされてないよ、される前にイェダムが来てくれたから、」
「……されてるじゃん、これ、」
大きく開いた首元。
そこの鎖骨の下辺り、紅く変色している。
その紅い痕。
そんなものをあいつがAにつけたのか、
そう思うと怒りしか湧かない。
俺が人差し指で触れると、
Aは思い出したように
「あぁ、うん…」
とだけ言った。
「でも、それだけ、だよ」
「それだけ？それだけじゃないよ、それで十分許しちゃいけない、」
「……」
「痛む？」
「ううん、痛くない。けど……気持ち悪いっ……」
「っ……」
悲しそうに、苦しそうに言ったA。
その顔を見た瞬間、
俺の心もずきっと痛んだ。
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作者名：もなか | 作成日時：2022年10月4日 12時
