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しばらくそうしてる内に、ゆっくりと瞼が開かれる。
閉じられた目が開いたことでまたぽろっと涙が零れる。
頭を撫でていた手をそっと離して、
『ごめん、起こした？』
そう聞いてもAは何も答えない。
そのままむくっと体を起こすと、俺を見つめる。
『夢？』
『え？ちゃうで？』
『いや、夢だ、だってアサヒくんがここにいるはずない』
『いや、それは…』
『夢、なら……』
そこまで言うと、Aは俺の腕を引っ張った。
その力に引かれてベッドに座り込めば、すっとAの腕が背中に回る。
『夢なら……ちょっと、だけ…』
『っふ……っ……』
『……A？』
『怖い……、私は上手く…やれてるのか、みんなは…どう思ってるのか…、今日を乗り切っても、明日はっ出来ないかもしれない…』
泣きながら、しがみつくように俺に抱きつくA。
こんなに弱ってるAは初めてかもしれない。
なにかに感動して泣いたり、上手く出来なくて落ち込んだり、そういうのは何度か見てきたけど、こんなに苦しそうな姿は見たことがない。
いや、もしかしたら、見せなかっただけなのかも、俺らに。
そう思うと、俺の胸もぎゅっと締め付けられた。
Aの背中に腕を回して、とんとんと一定のリズムで動かす。
『大丈夫、大丈夫やで』
『Aはいつも上手くやれてるし、みんなもそれを認めてる、もし、なんか出来んくても、俺らがおるやん、誰でもAを助けてくれるで』
『……ふっ……っ』
『大丈夫、大丈夫、Aは十分頑張ってんで』
俺の背中に回った手、服を掴むみたいにぎゅっと力が入るのを感じる。
華奢でぎゅっと丸まったその体は、体が大きい方ではない俺の中にもすっぽりと収まる。
こんなに小さな背中でどんなに大きなものを背負っているのか。
しばらくその背中をとんとんと撫でていれば、
泣く声も、しゃくり上げる声も聞こえなくなる。
俺の背中に回った腕の力も弱まり、規則正しい寝息だけが聞こえてきて。
もしかしたら、Aがこうやって誰かに縋るようなことはもうないかもしれない。
夢でしか俺に頼ることが出来ないような、不器用な女の子。
なら、いっそ夢でもなんでもいいから、俺が涙を拭ったあげたい。
何度、夢と間違ってもいいから、酔っ払って記憶をなくしてもいいから、どうか1人では泣かないで。
そう願って頭にちゅっと小さなキスを落とした。
愛おしいAがどうか幸せな夢を見られますように。
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作者名：もなか | 作成日時：2022年10月4日 12時
