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アサヒside
「あれ、Aってさっき帰ってきませんでしたっけ、ドアが閉まる音がした気がしたんですけど」
「嘘、俺気づかなかったんだけど」
「ジフニヒョン、俺とずっと騒いでたからじゃないですか？」
「だってそれはジョンファニがMV見て叫ぶから」
「ちょっと俺部屋見てきます」
MVの感想をAに直接伝えたいというジョンファニに連れてこられたA達の宿舎。
俺たちが着いた時にはやっぱりAはまだ帰ってなくて、
待つ間に始まったAソロ曲MV鑑賞会。
まぁ、騒ぐ騒ぐで。
俺はもう何回か見てたし、ハルトからも話を聞いてたからちょっと傍観。
そんな時、ドアが閉まった音がして、
あ、やっと帰ってきたななんて思ってしばらく待っていてもリビングのドアは開かない。
気のせいだった？
確認のために訪れたAの部屋。
ノックをしてみるも、反応はない。
あれ、ほんまに気のせい？
『A？入るで？』と一声かけてドアを開ける。
なんや、寝てるだけか。
間接照明もイヤフォンも付けたまま眠るA。
寝る気はなかったのか、布団も被っていない。
最近のAは信じられないくらいに忙しかった。
もちろんカムバを控えた俺らも忙しいのは間違いないけど、Aはそれにプラスしてソロ曲の方も準備していた。
俺には絶対こなせないと思うようなスケジュール。
同じ会社にいて、同じマンションに住んでいるというのに1回も顔を合わさず一日を終える日もあった。
疲れてたんやな、
音を立てないように近づいて、頭をそっと撫でる。
こう見ると、初めて出会った時からあんまり変わってないかも。
今回のMVとか、雑誌でみるAは、随分と大人っぽくきらきらとしている。
でも、本当は俺よりも年下で、寂しがりなとこもあって、ただの20歳の女の子。
俺たちの前では、いつも笑顔で、弱音なんて吐かない強い子だけど、
こんな風に眠るほど疲れてたんだなと思うとどっかで俺らが見といてやらないとなと思う。
『っ…ふ……っ』
『！』
そっと頭を撫でていれば、Aの微かな声が聞こえて、よく見れば閉じられた目から零れる涙。
苦しそうに眉をひそめ、静かに涙を流す。
何の、夢を見てるんやろ、
なにが、そんなにAを苦しめているのか、
できるなら俺が、全てを取り除いてやりたい。
そう、思うけど、今俺に出来ることはなくて。
起こさないように、そっと涙を拭うだけ。
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作者名：もなか | 作成日時：2022年10月4日 12時
