吾輩はヌナでありヒョンである (ページ44)

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○恒例の鑑賞会2 *DKside ページ44

『はあ…見終わった』

「今回は寝なかったー！」

『ソクミナ声でかい！静かに！』

「はい…」

静まり返ったリビングで響いた声にお叱りを受けてしまった。
あれから思ったよりも早くDVDを見終わりソファーでだらけていた僕たちはなにをするでもなく駄弁っていた。
すると突然、ヌナが両腕を上にある突き上げると、小声ながら叫んだ。

『はー高校時代に戻りたい！』

(…始まった)

ヌナは高校というものに夢があったらしい。突然始まる発作みたいなものでこれまで何度か遭遇した事がある。
ちなみに、今回見たのは学園モノだった為かヌナのため息はそれはもう深かった。

『可愛い制服着たかった』

「高校で着たでしょ」

『でもほとんど行けてなかった時期あったし…ほら、制服ってロマンだから』

(ロマン…？)

「制服か…」

『アニメもだけど、韓国の高校の制服かわいいしさ～！もう今着たらコスプレなっちゃうけど良いよね～』

夢だわと遠くを見る彼女に名案が浮かぶ。

「僕のあげよっか」

『男子のより女の子のがいーの』

玉砕。けど見たい気もある。

「僕の着てブカブカなヌナも見たいなー」

『またそういうことを…ばか』

こつんとおでこを小突かれる。
さすりながら隣を見れば口をもにょもにょとして照れてるヌナもすごくかわいい。
そんなヌナを見て、女子制服を着た姿もきっと可愛かったのだろうと思いを馳せる。
それと同時になんとしてでもヌナの制服姿が見たいという欲がでてしまった。

「ねえヌナ」

『なに？』

「高校時代の写真とかないの？」

『へ、』

尋ねた途端、ヌナの顔が強張った。
別に変な事を聞いたわけではないのだけど目を泳がせて悩むAヌナは僕を見ると、あーとかうーとか唸りながらもぽつりぽつりと話し出した。

『昔のはね、その、データとか全部消したの』

「え？」

『このグループに入ったからにはさ、女の子だった頃のとか、やっぱりそういう不利なものは消さないといけないでしょう？』

「あ…」

まずった。
ぼやけていた頭が一瞬でスッと冷える。
ヌナは男としてこのグループに入ったのをメンバーである僕もよく知ってるのになんてマズイことを聞いてしまったんだろう。

『なんであんたが暗くなんの！高校も良いけど、それより今が一番だから！』

「ヌナ…」

よほど深刻な顔をしていたのか、慌てて僕に気にしていないと弁解するヌナがすごく気丈に振る舞ってるように見えて、僕ら気づけば彼女の手を握っていた。