吾輩はヌナでありヒョンである (ページ40)

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○Ｐとヌナ1 ページ40

『ジフン？暑くない？』

「…」

『聴こえてないか…』

作業部屋に来てどれ程経ったのか。
ジフンの牛耳る作業部屋は相変わらず様々な機器や音楽雑誌が密集していて、私なんかでは到底把握しきれないものが詰まっている。

Adore Uの活動が終わって数週間が経つ。
カムバックへ向け次の曲の為創作活動が本格的になった今、あたためてきた楽曲を確固たるものへ形成していく為の大切な時期である。
…のはわかるけど人を呼びつけておいてひたすら無言なのもいかがなものか。

プロデューサーであるジフンはここ数日作業部屋に篭りきりな日が続いており、メンバーも様子見で訪れるが、あまりの空気に耐えられず数分で出て行くメンバーもいる始末だ。

かくいう私もその一人で、こんな重苦しい空気の中2人きりでなんて長時間居られないのだけど、その空気を作る張本人であるジフンに呼ばれてしまっては居らざるを得ない。

『ねえジフニ～？来たよ～？』

いくら呼びかけてもヘッドフォンをしっかり付けて画面を見つめる彼は私の方を見ることすらしない。

(おかしいな…この人自分で呼んだこと忘れてんじゃない？)

じっとりと、手のひらが熱くなる感覚に忘れていた時計を見るとここにきてすでに一時間は過ぎていた。

(前の曲の時も呼ばれたけど、あの時は他のメンバーも居たから耐えられたけど…。ヘッドフォン、外すと怒られそうで怖いし…うーん)

活動期間が終わったとしても仕事が休みというわけではないのだから、もう少しでマネージャーが呼びに来る時間になる。

『ジフン！』

意を決して私は立ち上がると、彼のヘッドフォンを勢い良くもぎ取った。

「なっ！なにすんだよ！」

『人呼んで放って置くことはないでしょ！ずっと居るのに返事もしないなんて！』

怒鳴る私を上から下まで見た後、ジフンはきょとんとすると驚きの発言をする。

「…来たなら呼べよ」

『来てから何回も呼んだわあほ』

「全然気づかなかった…ごめん。」

『ぐ、別にいいけど…』

「どんくらいいた？」

『軽く一時間はいたかなぁ。もう少しで収録にマネージャーが呼びに来るよ』

「嘘だろ」悔やむような仕草をするジフンを見下ろすと、こちらを見るジフンと目が合った。

「お前に用があったんだよ」

『いや、その用の為に来てるんだけど』

「そうだよな、気づかなかったのは謝るわ。ごめん」

ジフンは自身の顎に手を置くと、また画面へ向かい直すとヘッドフォンを首に掛けた。