吾輩はヌナでありヒョンである (ページ27)

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○ペンサは程々に1 ページ27

夏が近づいてきている。
それとは違い、熱気に包まれた会場ではメンバーが会場のファンへ向けてにこやかに手を振る。
そんな中でアイドルとしての自分へ注がれる同年代の女の子達の視線と、写真を撮るマスター達の姿にひたすら圧倒されていた。

今日のサイン会での両隣はジスとハンソル。サイン会の順番としてはジスから私、そしてハンソルの流れになる。

これはまたとんでもないアメリカンなメンバーに挟まれてしまった感が否めない。
ハンソルと他愛ない会話をしていると緊張する私に気付いたのか隣のジスがぴたりと肩をくっつけてくる。

「ねえ、ハル。ハート作ろ」

なんていいタイミングなのか。
ジスの言葉にかくかくと頷いて、2人で大きくハートを作れば途端に会場から黄色い声が上がる。
すごい、シャッターも凄まじい勢いで押されている。

吹っ切ることも大事だと肩の力を抜いて笑顔で手を振る。
私にとってメンバーも、応援してくれるペンも同じくらいに大事なのだ。

「いつもだけど、今日もかっこいいよハル」

『それはジョシュアもだよ、褒めすぎ～』

この～、と肘でつつくとへらりと笑われる。彼のいつもと変わらない態度に、こういう場で緊張を解すにはやはりいつものように振る舞うのがいいのだと、ことさらに感じる。
自信の表れがアイドルなのだ、強気で自信満々、そう意識していこう。

サイン会という名の触れ合いありきの交流会が始まり、順にファンの人がメンバーとの会話をしていくのをドキドキしながら見まもる。
規則的な流れに、わたしのところにも番が回ってくる。

『あんにょん～！…ヌナ？』

「あんにょんハル～、ヌナだよ～」

にこにこ。目の前に来てくれた女性の手を握りながら目を合わせて話しをする。
ふわふわと甘い匂いのする女性。
この日のためにおしゃれしてきてくれたのであろう、握る指先、光るネイルがそれを物語っている。

『どこから来たんですか？ふふ、綺麗な爪ですね』

「日本だよ～！ハル日本語大丈夫だって聞いて楽しみにして来たの」

『ほんと？嘘、すっごく嬉しい！日本のどこ？？』

慣れてくるとサイン会はすごく楽しい。
かわるがわるペンの人が目の前に来てくれて、直に触れ合えるこの空気。

僕のペン？それともほんとは誰のペンなの？とか、ちょっといじわるな質問だって笑って答えてくれるのがとても楽しいし、隣のメンバーとも会話を共有できるのがすごく楽しい。