吾輩はヌナでありヒョンである (ページ23)

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○鈍感ヌナ1 ページ23

化粧品と整髪剤の匂いは嫌いじゃない。
まだ出番まで時間の余裕のある控え室では、メイクやスタイリストの人の声が飛び交っている。
心地よい喧騒が右から左へ抜けて行く。昨晩、あの後ジュンと買ってきたチキンは予想通りの争奪戦が繰り広げられ、なんやかんやとみんなで夜更かしをしてしまった。

(今日は帰ったら速攻で部屋に篭って溜めてたアニメを堪能しよう…)

スタイリストさんが回ってくるまでまだ時間がある。
欠伸を一つ噛み殺していると、後ろから腕がにゅっと伸びてくる。
それに驚いて欠伸が引っ込んでしまった。

「ヒョン～ちょっと髪に癖ついてる」

『ミンギュ…今欠伸してたのに』

「昨日夜更かししたから眠いんだ？」

『分かってるなら欠伸させてくれよ…』

言いながらミンギュを見上げると、すでにメイクを終えていたようで普段より一層格好良い顔が私を見つめていた。
元から格好がいいとこうも違うのかと感慨深くなりつつ、首に回された腕をぽんぽんと叩いた。

「俺は全然眠くないよ？」

『あんたは眠くなくても僕は眠いの、てかね、もうなんで昨日あんな詰められなきゃいけないの』

昨日は大変だった。
ジュンと帰ってチキンを渡すまでは良かった。その後、なんで二人きりで出掛けたのかと噛み付く勢いのジョンハン含め、他のメンバー達にこれでもかと詰められたのだ。
いつもは聖人君子のようなジョシュアの笑顔も、あの時は少し冷ややかだったのも思い出すと背筋が寒くなる。

「ハルヒョンはこういうところが鈍感なんだから」

『…なにそれ』

いつの間にか隣にしゃがみ、覗き込むように私を見上げるミンギュはにっこり笑って続ける。

「みんなヒョンのことが好きなんだよ」

『な、わ、…僕だってみんなが好きだよ』

「そういうことじゃなくてー、もう、」

…私が鈍いのか？
セットされたのを崩さないようミンギュの髪を撫でると彼は口をパクパクさせた後、気まずげに黙ってしまう。
かわいいかわいいミンギュは本当に大型犬に見えてくるからたまらない。疲れより構ってあげたくなる気持ちが勝り、セットされてなかったら撫で倒すところだ。