吾輩はヌナでありヒョンである (ページ22)

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○甘い勉強会4 ページ22

あの後、メンバー達が帰ってくる前に宿舎を出た僕たちは夕食を済まし、帰路についていた。
隣を歩くAは急いで支度したのか無造作に髪を縛った男の子そのものの格好で、まるでハニヒョンと歩いているような感覚になる。

『ここのチキンみんな大好きだからきっと喜ぶよ』

「そうだね、取り合いかも」

お土産に包んでもらったチキンの袋を嬉しそうに揺らしながら鼻歌交じりで上機嫌の彼女。
かくいう僕も久しぶりの外食で気分が良かった。

『明日って朝から局入り？』

「ん？そうだね、寝坊助さん」

『こら！起きるから！ほんとに！』

「いつも起きられなくてヒョンに起こしてもらってるのはだれ？」

『そ、れは』

あっという間に追いつき、してやったりと見下ろせばまた頬を膨らませる。

「女の子はみんなこうやって頬を膨らませるの？」

それを真似るように愛嬌をすると今度は彼女が噴き出す。

『ぷっ、ジュンがするとかわいいのむかつく！』

「アイドルだもんね、かわいくてなんぼ」

『やだ～もう、さすが子役出は違う』

他愛ない言い合いをしながら夜の繁華街を抜け、閑静な住宅街へと入る。
それにつれて言葉数が少なくなると、先を歩いていたAがいつの間にか隣を歩いているのに気がついた。

「なに、ゆっくりになったね。眠いの？」

『ん？いやー、なんとなく嬉しいと思って』

「嬉しい？」

『うん、だってジュンと外食って中々無いからなんとなく』

そういえば2人きりは案外なかったかも。
いつも何人かかメンバー全員で外食だったのを思い出してふと隣を見ると本日二度目、こちらを見上げる彼女と目が合う。

『ミンハオも今度勉強誘おうね！』

「！…そうだね」

そしたら今度は3人でご飯！と息巻くように言うとさらりと僕の手を握り、ブンブンと振り出すもんだからたまらない。

(なんかカップルみたいだけど、この子はそんなこと一ミリも思ってもないんだろうなあ)

僕含め年頃の13人の男と共同生活を送る彼女はたくましいと言えばたくましいが、こう2人きりになるとやっぱり女の子なんだと意識してしまう。

眼前で揺らされる、力強く握られた手をそっと握り返す。
身長のわりに華奢な肩や腕、髪を結んでいる今、そこからのぞく首だって細い。
街灯に照らされ、隣をうきうきと歩くその姿にこの胸にこみ上げるものがなんて名前なのか僕はまだ知らないでいた。