第一話 後編 ページ5
「はあ、やっとついた。」
「うっ…眩しい」
くらっとするほどに眩しい光が僕の身体に突き刺さる。咄嗟に顔を手で覆うが、すぐにそれが害のないものだとわかり、その手を下ろす。
そこはさきほどまでの殺風景とはうって代わり、賑やかなのが容易に見てとれる風景だった。
沢山の人々。大きな道の端々に、それぞれの看板を立ててズラッと並ぶ店。店の中にいる白くてぼんやりとした人達は、そこの店主だろうか。人々は各々会話をしたり、食べ物を買ったりして店を利用しているようだ。店の至るところには、照明がいくつもとりつけられていて、どんなに遠くからでもこの場所の存在がわかってしまうような気がした。
あの暗い暗い世界の奥には、こんなところがあったのか。もしかしたらあの光はこの店の照明の光だったのかもしれない。
はじめての景色に目を奪われ、暫くの間道のど真ん中で立ちすくんでいた僕だったが、やっと、足を一歩踏み進めはじめた。
八百屋、魚屋、肉屋…
本屋、雑貨屋、家具屋…ラーメン屋！
ぐうう
突然僕のお腹が大きな音をたてた。そういえば、ここにくるまでなにも食べ物を口にしていない。どうすればお店の食べ物を食べられるのだろうか。僕は今自らの服以外なにもない、無一文の状態だ。
ぐうう
再度、僕のお腹が情けなく鳴る。
「やっと、人のいる場所まできたのに、こんなんじゃ飢えて死んでしまうよ…」
希望が途絶えた…
僕はガクンと膝から崩れ落ち、その場に手をついた。
たかが食料されど食料……いや、普通に食料は大事だ！誰か、誰か助けてくれ！
「あのー…」
真後ろから不意に声が聞こえて、ビックリして僕は振り向いた。
そこには僕を見て唖然とする少年が。
しまった、変な人だと思われてしまったか…！！
弁解をしようとするが、身体が石像のように動かない。
「えっと、もしかして…何かお困りですか？」
そんな僕の焦りとは裏腹に少年は優しい口調で僕に問いかけた。
「……あ。えと……その…。」
どうしよう。
初めての会話に緊張が止まらない。心臓がドクドクと脈打っていることかよくわかる。
そんな僕の様子を不思議に思ったようで、目の前の少年は心配そうに僕を見つめる
「…？どうかされまし＿＿」
「お腹が！！！」
突然大声で叫ぶ僕に少年はビクリ、と身体を動かす。そんな彼の様子を全く見ずに、僕は大きな声で問いに答えた。
「お腹が、空きました！！！！！！！！！！！」
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作者名：桜の枝の先っぽ | 作成日時：2017年11月14日 20時
