29. ページ33
部屋の暖房を入れる。
慌てて脱衣所からバスタオルを二枚持ってきて片方を不死川さんに渡した。
「大丈夫ですか?寒くないですか?……着替え……たいですよね。何かあるかな…ちょっと待っててくださいね」
「大丈夫だァ、着替えはいい」
「でも、」
「いいから、アンタこそ早く着替えろォ」
「はい……すみません」
不死川さんには居間の座布団に座ってもらい、私は別の部屋で浴衣に着替えた。いつの日か兄がうちに泊まった時に置いていった男性ものの浴衣を押し入れから取り出し、持っていく。
「あのこれ…兄が一度だけ着たものなんですがよければ…」
「すぐ帰るから要らねェ」
「駄目です。風邪ひいちゃいますから。お茶淹れてくるので戻ってくるまでに着替えててください」
返事をしない不死川さんに兄の浴衣を押しつけて台所へ向かった。
熱いお茶を淹れてまた居間に戻るときちんと着替えていてくれて。濡れた髪の毛はいつもと雰囲気が違って、さらには胸元が大胆にはだけた着流し姿というのも相まって……彼を直視できない。
「…お茶、どうぞ」
「わりィな」
濡れてしまった不死川さんの隊服と羽織をハンガーにかけ、暖房が当たりやすい位置に吊り下げる。
「雨止みませんね…」
「だなァ」
隣に座り、私も湯呑みに口をつける。温かいものが喉を通れば幾らか気持ちが落ち着くだろうと思ったが、全くそれは意味を成さなかった。
私の部屋の中。隣には不死川さんがいて。そしてその彼は何故かさっきから口数が少ない。
「えっと………あ!お腹すいてますか?夕飯食べて行きます?」
「……いや、いい」
「じゃ、じゃあお風呂、入りますか?その方があったまります、し………」
さっきからそっぽを向いてむすっとしている不死川さんと、なんとか会話をして間を持たせようと試みるも、どれも不発に終わる。
「あ、お萩も、ありますよ…?」
「さっき食ったァ」
「…………ですよね、」
609人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時