色恋に興味がない男の話【不死川実弥】

17.〜Another side〜 ページ20

柱たるお方に私なんかが文を送ることは勿論できないし、任務が一緒になることだって数ヶ月に一度。

蝶屋敷や藤の花の家紋のお屋敷でたまたまお会いする確率なんて何パーセントあるだろう。




でも、会いたい……そう願ってしまう私は身の程知らずな上わがままで、どうしようもない。



　
.





.





毎週通っているうちにお婆ちゃんと仲が良くなって、不死川様のことを話したりもした。孫を見ているようじゃ、と言っていつもニコニコしながら話を聞いてくれるのが嬉しくて。

お婆ちゃんはいついつ彼が来てたよと毎回教えてくれたけれど、なかなかお会いすることができなかった。





「ねぇお婆ちゃん、彼は？今週来た？」


私がいつものようにそう聞くと、にやりと笑ったお婆ちゃんが私の後方をちらっと見た。


「あっち見てごらん」


首を回して言われた通り後ろを向くと、店の奥に座っている不死川様の姿があって。一瞬目が合ったあと、気不味そうにぷいっと目を逸らされた。



「ちょ、ちょっとお婆ちゃん！早く言ってよっ…！」

「ふふ、ほら隣行っておいで」

「もう〜…」




顔に熱が帯びる。
聞かれてた、絶対。
恥ずかしい、恥ずかしい。

でも………会えた嬉しさのほうが上回っていた。





「あ、あの……お久しぶりです。お隣、いいですか…？」

「おぉ…久しぶりィ」



久しぶりに聞いたその声に、心臓が早鐘を打つ。



「随分、婆さんと仲良くなったんだな」

「実はあれから何度か通っていまして……へへ」




毎週金曜日、不死川様に会いたいと思って通っていた、なんて言ったら気持ち悪いと思われるかな…




「ここの甘味とっても美味しいので！…………というのは建前で…いや美味しいのは本当なんですけどね？不死川様がいらっしゃればいいな、と思って…通っていたんです」

「…………」

「ご、ごめんなさいっ……久しぶりにお会いできたのが嬉しくて……つい思ってることを…」

「俺も、」

「………え？」




俺も、とは………？




「俺も、アンタに会えるかなと思って、きた」

18.→←17.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す