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翌朝。
屋敷の婆さんが用意してくれた朝食を彼女と二人で頂く。
「あの…昨日はありがとうございました」
「なにが」
「………手を、握ってくださって…」
「別に、礼には及ばねェよ」
本当は暫く寝付けなかった癖に。腕に力が入りまくっていたお陰で、朝痺れて暫く動かせなかった癖に。格好つけて答える自分に胸焼けがした。
「それよりアンタ、脚は平気なのか」
「はい、普通に歩けますしなんら問題ないです!」
「そーかァ」
「不死川様は…傷、痛みますか?」
自分のせいで、とでも思っているんだろう。心配で顔を歪めながら俺の肩をじいっと凝視している。
「こんなもん痛くも痒くもねェ。柱舐めんじゃねぇぞ」
「…………っ!」
「俺のこたァ気にしなくていい」
「やっぱり不死川様は優しい方です…」
「………」
俺のことを「優しい」だなんて、彼女はやっぱり変わっている。
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屋敷を出て途中まで一緒に帰った。
「じゃ、俺こっち」
「…あ、はい。お世話になりました…!」
「俺はなんもアンタの世話しちゃいねェよ」
「あ、そ、そっか……すみません…」
「くっくっ、」
顔を真っ赤に染めながらペコペコと頭を下げる姿が可笑しくて、笑ってしまう。考えてみれば、彼女といるときの自分は表情が緩むことが多いんじゃないか。
……無性に恥ずかしくなって、顔の筋肉に力をいれた。
「じゃあ、またなァ」
「はいっ。お疲れさまでした」
いつも通りの深過ぎるお辞儀をした彼女は背中を向けて去っていく。俺も背中を向けて、自分の屋敷の方向に足を進めようとするも…なぜか足が動かねェ。
………気がつくと、意図した方向と反対側に足を向けて早足で歩き、彼女の細い手首を掴んでいた。
「不死川、さま?」
「……あー…やっぱ送ってくわ」
あんぐり、と口を開けている彼女は小さな声で「な…なんで…?」とつぶやいた。
「別に。気が変わっただけだァ…」
「……ありがとうございます…」
ゆっくりと彼女の歩くテンポに合わせながら歩む道のりは、以前感じた煩わしさなんてものはなくて、どこか居心地の良さすら感じてしまった。
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もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時