4話 ページ4
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「…お前、何でいんの。」
中崎は突然の俺の登場にもびっくりしていたが、俺に話しかけられて余計びっくりしたようだ。
ああ、成程。
意識が戻ったのか。
恐らく、明日から登校できるのだろう。
もしかしたら、あの女教師が仕込んだのかもしれない。2か月も眠っていたのなら、多少リハビリをしないとまともな学校生活を送れないだろう。実は少し前にもう意識が戻っていて、突然復活させてみんなをびっくりさせようとしていたのかもしれない。
あの女教師ならやりそうだ。
そう心の中で片付けつつ、俺は一応聞いた。
「何、もう治ってたの？ 明日から登校再開ってとこか。」
そのまま自分の席に近づき、俺は机の中から筆箱を入手した。
その間も、中崎は目を泳がせながら「えーと、その」と口の中でもごもごと繰り返している。
そして、中崎は意を決したように一人頷いてから、口元に大きな弧を描いて見せた。
普段の中崎からは、想像もつかないくらいの満面の笑みだった。
『……私、生霊なんですよ。』
「……は？」
『ほら、足ないでしょ。霊だから、一応飛べるんですよ。』
そう言って飛んで見せた彼女は、本当に足がない。
俺は顔が引きつっているのを感じながら、強がって言った。
「…どうせドッキリだろ？ フジ辺りが、この教室のどっかにいて、カメラ回してんだろ。」
そう言うと、中崎は少し考え込んでから、口を開いた。
『中崎A、15歳。誕生日は10月15日、てんびん座のB型。』
「は？」
『好きな食べ物はお好み焼き。嫌いな食べ物は辛いもの。家族構成は、父、母、私の三人家族。昔「ユウコ」という名前のメスの柴犬を飼っていたけど、私が中二の時に亡くなった。』
ペラペラとよく喋る口は突然止まり、中崎の口角は更に上がった。
『私のプロフィール。ここまで知ってる人、クラスの人の中にはいないから。』
どうやら、ドッキリではなく本物の中崎であり、本物の生霊だと信じこませたいようだ。
俺はため息をつき、両手を頭の上に掲げた。
「降参」のポーズだ。
『お、理解してくれました？』
「理解するしかねぇだろ……で、生霊になってまで誰になんの恨みがあるんだよ。」
そう尋ねると、中崎はちょっと驚いた顔をしてから、笑って見せた。
笑う、と言っても、先ほどのようなにんまりとした笑みではない。ふ、とした瞬間に見せる様な、どこか儚げな笑みだ。
『特に、理由はないよ。』
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作者名：しゃーぷぺんしるのしん | 作成日時：2019年2月12日 20時
