最後に、一つだけ。【実況者】 (ページ3)

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3話ページ3

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「でも、珍しいね。キヨが他人のことでそんなイライラするなんて。いつもは自分のことしか考えてないサイコパス思考なのに。」

「うるせぇな。あとサイコパスは余計だ。」

「いやいや、そこ結構重要だって！」

ほら。
あの、普通の人間よりは幾分か優しいフジでさえも、彼女の話をしようとはしない。
さっきも言っていたが、フジはフジなりに「不謹慎」だとでも思っているのだろうか。死んだわけでもないのにそう思う事自体不謹慎じゃないか…と思ったが、フジなりの優しさなのだから仕方ない。

「キヨー、フジー。購買行こうぜ！」

教室の入口を見ると、そこには別のクラスのこーすけとヒラがいた。
クラスではそこまで目立った立ち位置についていない俺にとって、フジを含めたこの3人は、数少ない「友人」と呼べる存在である。

席から立ちあがり、言われた通り購買部に向かう。

その途中で、ふと思った。

この3人は、もし俺が意識不明の重体になったり、死んだりしたら、悲しんでくれるのだろうか。
そして俺は、この3人の為に泣いたり、悲しんだりすることが出来るのだろうか。

少なくとも中崎Aには、そうしてくれる家族はいても、友人はいなかった。
それはもしかしたら、とても残酷で、恐ろしいことなのかもしれない。

(何で俺、中崎Aにこんな同情しているんだろう。)

この感情は、どこから来るものなのだろう。

こんな風に難しいことを考えたのは初めてだ。
今まで、何も考えずぼさっと生きてきたから。
恐らく、大多数の人間はそうだろう。

もしかしたら、中崎Aは、そんな大多数の人間とは違い、日々色々なことを考えて生きてきたのかもしれない。
考えて、考えて、考えた結果。飛び降りというものに走ってしまったのではないだろうか。

俺は何とも言えない気持ちを振り払うように、購買で買ったあんぱんにかぶりついた。

その日の夕方。
俺は教室の机の中に筆箱を置いてきたことを思い出し、慌てて引き返した。

誰もいないはずの教室の扉を勢いよく開け、俺はそのまま自分の席に直行するつもりだった。

…つもりだった。

『あ。』

俺の隣の席に。
本来ならば、誰も座っていない席に。

あの、中崎Aが座っていた。