心臓に悪い君(14) ページ16
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高校生最後の夏。私はどうにかして片思い中の伊東くんとお近付きになりたかった。
彼は人気者とは言えず、友達も多い方では無い。だけど部活のサッカーでは他より頭ひとつ出て上手いところや、クールで無表情かと思えば急に子供っぽく笑うところなど、挙げたらキリがないけど、沢山好き。
冷房が効く教室で、猛暑のなか練習をしている伊東くんを見つめる。私たちの教室は1階にあるので、近い距離でグラウンドを眺めることができる。課題をする手が止まっているのを見た友達が、「ちょっと〜、私がいるんだからよそ見してないで早くやってよ〜帰りたいんだけど!」と騒いでいる。
「 サッカー部見てんの?懲りないね〜それにしてもさ、伊東に目をつけるって結構センスいいね、A。私だったらやっぱ王道の南野くんかな〜。 」
「 えぇ、そう?でも確かに南野くんはかっこいいよね。 」
友達が良いと言っているのは新入生の南野拓実くん。イケメンでサッカーが上手いと今絶大な人気を誇っている。やはり女の子には困らないようで、彼女が途切れたことがないとか何とか。
そういうのに比べれば、伊東くんに彼女が出来たなんてあまり聞かないし、そもそも伊東くんって女の子とあんまり喋らない。断然伊東くんの方が幸せにしてくれそう。
「 でもやっぱ私は伊東くんかなぁ… 」
「 俺がどうした? 」
「 ん?いや、南野くんより伊東くんの方がかっこいいって話……えっっ!?待って、今のなし!聞かなかったことにして! 」
教室にいるはずのない声がして、顔を向けると窓に伊東くんがいた。あまりの恥ずかしさに手を顔の前でブンブンと振り、否定する動作を思い切りやっていたが、それが裏目に出て私は後ろからビターンっ!といい音を立てながら倒れた。
痛さ、恥ずかしさがぐちゃぐちゃになり死んでしまいそうだった。そんな私を見て伊東くんは顔をクシャッとして子供のような笑顔をした。
「 ふふっ、Aって面白いんだ、初めて知ったわ。 」
「 いっ、いや!ほんと、すんません… 」
「 今日はもう部活ないし良かったら一緒に帰ろ。その課題教えてやるし。 」
まさか急にこんなチャンスが来るとは思ってもいなかった。先程の恥の代償だということにして、ここは変に断らずに頷いた。伊東くんは「じゃ着替えてからそっち行く」と呟くと向こう側へと歩いていった。
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ゆりこ(プロフ) - 続編是非是非お願いします🙇♀️💓 (2023年3月21日 0時) (レス) @page49 id: 77cf571e3a (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - こんばんは。続編、ぜひお願いします。面白いので。。 (2023年3月20日 20時) (レス) id: d7601bed17 (このIDを非表示/違反報告)
ヒョナ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます📔♡ 続編希望です!!リクエストもまたさせていただきたいです☺︎ (2023年3月20日 19時) (レス) id: 915f0aebf7 (このIDを非表示/違反報告)
ミミミのミ(プロフ) - 続編希望です…❥🫣リクエストも思いついた時に送らせていただきたい所存です(p_x)❕ (2023年3月20日 19時) (レス) @page49 id: 2bc7b134a4 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - ミーこさん» わざわざお返事ありがとうございます。ミーこさんの文章は中毒性があり、続きを読みたくなります。本当にお金出して依頼したいくらいお気に入りです。これからも手が空いた時で良いのでよろしくお願いします。 (2023年3月15日 21時) (レス) id: d7601bed17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミーこ | 作成日時:2023年1月15日 13時