忘れたい君のこと(9) ページ3
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「 A。 」
あぁ、まただ。また私は貴方の夢を見てしまう。
頬が濡れたような感覚がして、私は目が覚める。案の定泣いていた。そう言えば、もうあれから1年経ったのだろうか。
1年前、彼…薫の海外移籍が決まった。呑気な私は「会えなくなるのは寂しいけど頑張ってね」と薫に伝えてしまうほどまだ付き合えるなんて思っていた。だけど薫の方がそう思っていなかったようで、そう言った私に返した言葉は「別れよう」。その瞬間、一瞬で凍りついた部屋の空気を今でも覚えている。
「 やめよ、こんなの思い出すの。 」
昔の話にずっと意識を置いていると、いつの間にか2時間も経っていた。あぁ、また時間無駄にしたな。と頭の中で繰り返しては苦しさで潰れてしまいそうになった。上がった体温にぼけっとしながら、重い体を起こして出社するために支度をする。
「 ねぇW杯見た? 」
「 見た見た!ヤバいよね、特に三笘薫と田中碧!あの顔でサッカーできるの強いわ。 」
「 ねー!ガチ恋になりそー。 」
女子高生たちが電車で喋っている内容を盗み聞きした。カタールW杯で薫の人気はうなぎ登り。スカートが短くて綺麗に身を整えた女の子たちが薫を見てキャーキャー騒ぐ。三苫薫という単語を聞くだけで苦しくなる私は相当重症なのであろう。
目頭がかっ、と熱くなる感覚がする。
ダメだ、泣いてしまう。
フラフラとする意識の中、鮮明に思い浮かぶのが「別れよう」と浮かれた私に冷たく言い放つ薫の姿。
なんで…なんでそんなこというの?私はまだ好きなのに。
「 かお、る… 」
満員電車の中で意識を失った。
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「 …ん、ここは… 」
「 あっ、目覚めましたか?ここは駅構内の医務室です。 」
薬品の匂いと電車のホームの匂いが混ざり合うこの空間。駅員が私の顔を心配そうに覗き込んだ。状況が理解出来ていない私に気づいたのか、駅員さんは「そう言えば」と言って話し出した。
「 ここに連れてきてくれた方、W杯で有名になった三笘薫さんなんですよ。やはりスポーツ選手の方って優しい方が沢山いらっしゃいますね。 」
「 えっ…薫が… 」
確かにニュースを見て日本にいることは知っていたけど、まさか巡り会っていただなんて。会いたい、とその一心だった。
「 あの、かお…三笘さんの連絡先って教えてもらうことは… 」
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ゆりこ(プロフ) - 続編是非是非お願いします🙇♀️💓 (2023年3月21日 0時) (レス) @page49 id: 77cf571e3a (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - こんばんは。続編、ぜひお願いします。面白いので。。 (2023年3月20日 20時) (レス) id: d7601bed17 (このIDを非表示/違反報告)
ヒョナ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます📔♡ 続編希望です!!リクエストもまたさせていただきたいです☺︎ (2023年3月20日 19時) (レス) id: 915f0aebf7 (このIDを非表示/違反報告)
ミミミのミ(プロフ) - 続編希望です…❥🫣リクエストも思いついた時に送らせていただきたい所存です(p_x)❕ (2023年3月20日 19時) (レス) @page49 id: 2bc7b134a4 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - ミーこさん» わざわざお返事ありがとうございます。ミーこさんの文章は中毒性があり、続きを読みたくなります。本当にお金出して依頼したいくらいお気に入りです。これからも手が空いた時で良いのでよろしくお願いします。 (2023年3月15日 21時) (レス) id: d7601bed17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミーこ | 作成日時:2023年1月15日 13時