7口 ページ7
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「今は悩むことが命取りですよ、姫様」
どこからか声が聞こえ、後ろを振り向くとそこには赤喜がいた。いつもと違い特段に優しい声で囁かれ、私の不安は不思議なことにどこかへと飛んでしまう。
「景政様を守り抜くことが出来ず申し訳ありません。景政様からご命令を承っておりますゆえ、戻って参りました。この城は私にお任せを。姫様は早急に江戸へ向かえとの事です」
「そうなのね、父様が…わかったわ。今すぐ私も江戸へ向かいます。準備はとにかくいいです。早く向かいましょう」
そう言って急いで車へと向かい後部座席に乗る。尾張から江戸までは高速を使っても短時間とはいえない。それまでに間に合っているといいんだけど。
車に揺られ、大江戸病院へと着いた。私の姿を見るや否や病院の中を案内され、ここから先立ち入り禁止と書かれた所へとたどり着く。
「こちらに景政様が眠られております。…刀傷が酷く、ただいまは昏睡状態ですが峠は超えました」
峠は超えたという医者の声にほっとしながら、父の元へと向かった。父の部屋の外には今日沢山見た制服が。
あれは真選組だ。天子様が関わっていることだから、てっきり見廻組が来るのだと思ったのだけど、武士だと真選組なのだろう。
ドアを開けるとそこには土方さんと近藤さん、沖田さんがいた。
彼に会えたことが嬉しくて、私は開口一番に「土方さん…」と呟いていた。
パイプ椅子に座っていた土方さんは立ち上がると綺麗にお辞儀をし、顔を上げると「先程ぶりですね」と優しく笑った。
何故かその顔が私の胸をきゅっ、と締めた。その途端顔が熱くなる感覚に襲われ、土方さんのことを見れなくなってしまった。
熱い顔のまま父を眺める。清潔感のある白いベッドで眠る父の顔は今はもう見せてはくれない優しい顔だった。
小さい頃はもっと可愛がって貰っていたんだけどな。
今となってはお見合いばかりで、顔を合わせる機会もめっきり減ってしまっている。
私が父を眺めていると、医者が顔をゆがめながら気まずそうに「…非常に申し上げにくいのですが、」と話し始める。
「…景政様はご病気を患っておられます」
「なっ!…それは本当ですか?」
「えぇ。…それももう随分と昔に判明したものです。私が発見致しましてですね…確か、A様が生まれてすぐでしたかな」
私が生まれてすぐと言えばまだ母も生きていた時…
まさかと嫌な予感がしてやまなかった。
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ミーこ(プロフ) - さちさん» ありがとうございます☺️❤️🔥なにせ私が土方さん推しなものでして笑 (2022年11月6日 19時) (レス) id: 3ecbe7c0be (このIDを非表示/違反報告)
さち - 続きが気になります!土方さんいいですよね。 (2022年10月31日 17時) (レス) @page6 id: 0e3bc286c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミーこ | 作成日時:2022年10月10日 19時