其ノ弐拾伍 ページ26
30分くらいたった頃、不死川の肩がぴくりと動き薄らと目を開ける。その目はすぐに見開かれ眼球に自分の姿を映すと同時に強く抱きしめられた。
「わっ……実弥さん?」
驚いて肩を掴むように抱いて問うもなんの返事も来ない。
しばらくしてゆっくりと体を起こし、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
「……よかった……」
そうポツリと呟くように言う不死川。
「はい、死ぬわけないですよ。もう一度死んでるようなものですからねぇ……」
「……そうだな、心配したぞ」
「……やけに素直ですね」
直球に気持ちを言うことをしてこなかった、出来なかった実弥が、ストレートに心配の言葉をかけてくれたことに驚いた。
「まァな……」
顔を除くと、少し頬が赤くなっていた。
目が合うとはずかしそうに視線を逸らす不死川。
「まさかお前が稀血とは思ってなかったけどなァ……」
「それは同感ですね…
あんな目付きを変えてヨダレを垂らす鬼なんて見た事ないから一瞬怯んでしまった…。
「聞きてぇことがある」
椅子にどかりと座る実弥。
「お前いつから呼吸使えるようになったんだ」
「そうですね……あの戦いが初めてですよ?使えるなんて思ってなかったですけど……むいくんが教えてくれたんです」
「時透がァ?」
怪訝そうに聞く実弥に、言われたことを説明すると納得した様子だった。
「なるほどなァ……。なんで心の呼吸なんだ?普通に気になってよォ。次元を越えてきたから時とかだと思ったわ」
「あーそれはですね……
私も最初は思って密かに練習してたんですけど、どうもしっくり来なくて……。
で、思ったんです。時を超えるんじゃなくて、1度止まった、止まるはずだった心臓が再び動き始めて今を生きてる。
動物にとって全ての命の源は心臓です。そんなことを考えると私には心しかないと」
「……納得だァ」
「ですよね!そう言ってくれると思いました」
あァ、と返事をし無言が続いた。
「あのよォ……」
沈黙を破ったのは不死川だった。
「帰ってきてから言おうと思ってたことが……」
と、言いかけた瞬間
「Aさん!!」
ドタドタと部屋に騒がしく入ってきたのは、
「むいくん!」
「良かった……ほんとに心配したんだからね」
そう言い、Aに抱きつく時透。
凍りつく不死川。時透は振り返りAに気づかれないように不死川に向かって舌を出す。
それを入口で様子を覗きに来た胡蝶が見てクスクスと笑っていた。
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作者名:かふぇもか | 作成日時:2019年11月3日 15時