其ノ拾漆 ページ18
運悪く体制を崩しその場に倒れた。
「っ……」
Aの顔のすぐ横に両手を付き、距離が近くなる。
心臓が死ぬほどうるせェ。向こうに聞こえちまってるんじゃねぇかってくらい鼓動が鳴っていやがる。
「っ……すみません、脚が……もつれてしまいました……」
「……気にしてねェ」
お互い目を逸らし、それだけの言葉を交わす。
再び顔を見ようとすると、お互いに目が合う。
「……実弥……さん?」
「……」
まずいなこれは。
離れようとしても俺の理性が言うことを聞こうとしねぇ。と言うより、体が思ったように動かないのと同時に脳が働かねぇ。
「っ……」
震える手を抑えて、落ち着くために何か術はないかとAの頭を撫でて気持ちを落ち着かせようとした。
「わりィ……体が思うように動かねェから……ちょっと待っててくれねェか」
そう言えば、少し驚いた顔をするも直ぐにふにゃりと笑うAは少し嬉しそうに「はい」と返事をした。
「……すまねェな」
「気にしてませんよ」
ニコリと笑うAの頭をわしゃわしゃと雑に撫でてやったら、Aは両手で俺の頭に添えてやり返す。
「実弥さん……今犬みたいですね」
「あァ?」
「可愛いです……!」
「はァ??」
意味がわからねェ事ばっか言いやがるこいつは。
Aの頭を撫でた後に俺の頬に添えられた手から感じる温もりは、今までに感じたことの無いほど暖かい。
風呂上がりで湯気が出そうなほど暑くなったAの頬をそっと撫で、包み込むように添えた。
「っ……」
「…………」
ゆっくりと距離を近づけ、唇にキスを落とした。
「っ…………」
「…何をなさっているのですか?」
突然聞こえた声に、体が固まる。
声をした方をむくと、胡蝶が立っていた。
「いやっこれは!私がっ脚を!」
慌てて起きたAは正座になる。
「……そうですか。わざわざ遠いところから迎えに来て、ずっとドアを叩いて待っていたのに一向に出てこないから何をしているのかと思ったら……」
「……」
「何か言ったらどうなんです?不死川さん」
青筋を立てた胡蝶は怒ると止まらない。
それは柱も含めた誰しもが知っている。
「……まぁ、良いでしょう。あら、Aさん着物の着付けが逆ですね、直して差し上げますよ」
「あ、ありがとうございます……」
そのまま見えないところで着付けを治して、「……これ以上変な事をしたら毒で殺しますからね」と耳元で囁かれて帰っていった。
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作者名:かふぇもか | 作成日時:2019年11月3日 15時