其ノ拾伍 ページ16
台所に並べられた器具や食器を見て、振り返るA。
「自炊するんですか!」
案の定、煩くなる。
「うるせェ、だったらなんだァ………着替えてくる」
「はい!」
自室に戻り着替え風呂を沸かす。
いつも敷かれている布団に座り、ぼうっと天井を見上げた。
「……さん、実弥さん!」
体を揺さぶられパチリと目を覚ます。いつの間にか眠っていてしまったらしい。
「お風呂できてますよ!火加減わからないんですけど手で触ったらちょうど良かったんで大丈夫だと思います」
すっかり眠っていてしまったらしい、日は完全に落ちて少し肌寒かった。
寝起きで働かない頭を、目一杯働かせる。
「……飯はァ」
「ご飯も出来てますけど……お湯が……」
「蓋しときゃ大丈夫だろォ、火は消したか?」
「消しました」
居間へと向かい並べられた飯を見て感動した。
「適当なんで、お口に合うかわからないですけど……」
「いや、大丈夫だ」
座って飯を食べ始めるように促す。
「いただきます」と食べ始めるAはとても幸せそうだった。
俺も箸を持ち箸で口へと運ぶ。
「どうです?」
「……………………うめェ」
ぽつりとつぶやくように応えると、ほっとした顔をするA。
「良かったです」
「あァ…」
黙々とご飯を食べ、食器を下げる。
「ごちそーさん」
「はい!お粗末様でした」
「おう」
座布団に座り、さっきまで食事が並んでいた机に頬杖をつくき、楽しそうに洗い物をするAを何となく見つめる。
視線を感じたのか後ろを振り返り首を傾げるA。
「……暇ならお風呂でも入ったらどうです?」
「……あァ……お前が先に入れ」
「いやいや!」
「ダメだ。客が先に入るのが当然だろォ」
「…見かけによらず律儀な常識人ですよね。実弥さん」
「褒めてんのか貶してんのかどっちかにしろ」
くすくすと笑った後に「これが終わったら入るんで待っててくださいね〜」なんて声を弾ませながら洗い物に戻るA。
「……ほんとにお前……」
「?なんか言いました??」
「何でもねェ……」
言いかけた言葉を呑み込み、Aが着れる洋服を探す。
寝床のタンスを漁り着れそうな着物を見つける。
「コレでいいだろォ……」
適当に掴んだ紐と帯を手に持ち、居間にいるAに渡した。
「え!!いいんですか?」
「同じもん着るのは気持ちわりぃだろ。しかも隊服なんざ汚れちまってるだろうがァ」
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作者名:かふぇもか | 作成日時:2019年11月3日 15時