其ノ捌 ページ9
「では、今日から不死川さんの訓練が始まりますよ」
「……ふぇ?」
唐突に朝告げられる言葉に思わず間抜けな声が出る。
にこにこと笑うしのぶに思わずたじろぐ。
「もう来ていらっしゃいます」
「もう来てるんですか!?」
怖いんだけど、ほんとに。あれ殺されるじゃんほんとに。目潰ししてきそうだよほんとに。
「殺しゃしねぇよォ」
背後から感じる殺気に思わずビクリとしてしまう。
「不死川さん。手加減してくださいね。嫁入り前の女の子に顔に傷でもできたら大変ですから」
ニコッと笑って去っていく胡蝶。
え、行かないでよ……。
「あ、……よろしくお願いします?」
そう挨拶するとどこかへと行ってしまう不死川。
ついてこいって意味なのかな。
「……食え」
暫く歩き森の中へと入り突然おはぎを渡してくる不死川さん。
「あ、ありがとうございます?」
「……あァ」
もぐもぐとおはぎを食べていると、剣を構えてくる。
何だこのカオスな状況。
「……はい」
静かに剣を構える。来る、と思った頃には遅く木刀はヒュルヒュルと音を立てて地面へと突き刺さる。
とても早い。見えなかった。
「まだまだだなァ」
「すみません……」
「気にするこたァねェよ、ゆっくりやってけばいいんじゃねぇの」
不死川さんって案外優しいのかも……。もっと怖いかと思ってた。まぁ、弟大好きだもんな。
「……テメェ……殺されてェのか?」
やっば全部口に出てたみたい。
「不死川さんに殺されるなら本望じゃん!」
と、思いがけないことを口走り思わず自分の口を塞いだ。
やってしまった……2次元の世界に来たからと言ってこれを言うのはまずい。
身構え頭を守るようにしていると、
「……そうかよォ」
と声が聞こえた。
前を見ると背を向けた不死川さんが立っていた。
「……?」
「お前ェ……好きな食いもんはなんだ」
「好きな食べ物ですか?魚なら鯵、肉ならなんでも好きです」
「そうかァ、……変わんねぇなァ」
「……?」
「着いてこい」
それからいくつ歩いたかしら、という程歩かされた。
山を超え谷を超え、ふくらはぎがパンパンになるほど疲れた。
もう夕暮れ時だろう。どんな遠くまで来てしまったのだろうか。
「ほらよ」
木をかき分け見えたのは、
「綺麗……」
綺麗な夕焼けだった。オレンジ色に染った空と下に見える湖に反射している光がキラキラと輝いている。
「綺麗なもんだろォ……」
「はい、とても……」
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作者名:かふぇもか | 作成日時:2019年11月3日 15時