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「渋谷さん。渋谷すばるさん」
聞き慣れたその呼び声に
抱えていた頭をあげる
招かれた部屋で置かれた椅子に腰掛けると
喉が乾き手が震えるのがわかる。
「怖い、ですか?」
怖い…?
そうか、俺は怖かったんや
「目を閉じて、ゆっくりと深呼吸しましょう」
言われた通りに目を閉じても
瞳に張った水は
まぶたの裏に吸い付く
そこに映ったあいつと一緒に
走馬灯って死ぬ直前しか見いひんと思てたわ
「落ち着いたらでいいのて、ゆっくりこちらを見てください」
そんな声、無視や無視
今目開けたら
二度とあいつに会えへんくなる。
それが、怖い。
成功率の低いこの手術
どちらに転んだとしても
俺はもう…
わかってる。
現実を見なくては
涙を拭うと
聞こえるはずのない声が聞こえる
まじかぁ〜そろそろやなw
走馬灯どころの騒ぎやないなこれw
はぁ、
こんなになってまで
こんなになるまで
俺は
隅々まで
お前に染まりすぎてた
end.
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作者名:時音 | 作成日時:2021年10月9日 0時