ミモザ 〜橙〜 ページ34
ーmaruー
「いらっしゃいませ!」
「予約の錦戸です」
「少々お待ち下さい」
ある花束を手に取り、海色の包装紙で飾る
「記念日、ですか?」
「え?」
「すみません。毎年予約入れてはるので、つい。」
よく焦げた肌の彼はもう何年も、同じ日に同じ花を同じ包装で予約していく。
車のナンバーを見る限り、かなり遠い場所からのお客さん
「あぁ、これ」
彼は口を横に開いて軽く笑う
「恋人さんへプレゼントですか?」
そうですね…と少し顔が沈むお客さん
あれ、聞いたらあかんかったんかな
すみません。
謝ろうとした時
「元々、もらう側やったんです」
「え?」
「元々は、恋人からもらってて」
「なんで、渡すように」
これは、聞いてよかったやろか…
「年に1回、海に流すんです。」
「え、流しちゃうんですか?」
せっかくの花束をなんで
「死んだんです。海の事故で」
思ってもみなかった返事に、その瞬間反応が出来なかった
「俺もあいつも、海が好きで、俺はサーフィンしてあいつはダイビングとか、まぁ、俺も一緒に潜ったりとかすることもありましたけど、その日はたまたま、別々に動いてて、急に波が荒くなってきたんて、俺はすぐ上がったんすけど、あいつは、戻って来れず、そのまま。
今日は、命日なんです。」
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作者名:時音 | 作成日時:2021年10月9日 0時