7話 ページ8
俺は彼女の横に腰を下ろした。
『君こそ眠れないのか?…風呂上がりでは冷えるだろう。』
そう言い、俺は着ていた羽織を彼女の小さな背中にかけた。
「ありがと。…………今日は月が綺麗なんだよ。
見に出てきた。
丁度杏寿郎と見たいと思ってたとこ。」
少し嬉しそうに笑う彼女に俺は胸が締め付けられるような感覚がした。
………抱きしめたい。
………いや、我慢しろ。駄目だぞ!
男ならば自分に厳しくあれ!
彼女は細く白い指で羽織の裾をぎゅっと少し握りながら答えた。
「杏寿郎寒くないの?」
『俺は大丈夫だ!気にしないでいい!女性が体を冷やすのは良くないだろう。』
そう言って彼女の頭をふわりと少しだけ撫でる。
Aは少し笑った。
「女性が…って、杏寿郎そんな男前な事言えるようになったんだ。成長って怖いね。」
『…君こそだいぶ料理が上手くなったではないか。おかげで俺はこの療養中に肥えてしまうかもしれない!わはははは!』
二人で笑い合う。
君の笑顔は本当に綺麗だな。
俺が命をかけて守るよ。
こんな時間が愛おしい。
他愛もない話で笑い合う、ただそれだけの事が俺にとってこんなにも大切なんだ。
彼女が口を開く。
「料理はお母さんがね、嫁ぐ時に困らないようにって死に物狂いで教えてくれたの。」
その言葉に、上がっていた気分が少し下がった。
彼女ももう二十歳だ。
そろそろどこかに嫁ぐ年だろう。
前にも弘とかいう男が彼女と逢引していた。
『…………縁談はあるのか?』
「あー…うん。実は結構来る。」
少し答えにくそうに彼女は言う。
その言葉に喉の奥がぐっと鳴った。
…そうだったのか。
俺が知っているのは数ある内の一つだけだったのか。
少し悔しいような焦燥感のようなものが胸に閊える。
「でも私が蹴ってきちゃって。
…ほら断れるような関係のやつばっかだったし。」
いや…彼女も良い家柄のお嬢様だ。
そのように理由もなく断れるだろうか。
『それは…理由があるのか?』
おそるおそる彼女に問う。
「理由?
それは私ほら、好きな人いるし。」
…は?
言い終わってから気付いたのか、硬直した笑顔のまま彼女は段々顔色が悪くなっていった。
杏寿郎side終わり!
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おさかなだいすき(プロフ) - ことりさん» ほんとですか!!嬉しいです!!これからも応援よろしくお願いいたします!君のハートに昇り炎天!!! (2021年1月21日 21時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
ことり(プロフ) - 36話思いっきり爆笑しましたwすっごい好きです!!これからも楽しみにしています! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 676d79dd2d (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - はりはりさん» あ!りがとうございます!!! (2020年11月23日 16時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
はりはり(プロフ) - すっごい好きです!!!主さんストーリー作るの上手っ!!!!! (2020年11月23日 3時) (レス) id: 52ba9d7a4c (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - 麗さん» ありがとうございます!!!修正します!! (2020年11月16日 15時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさかなだいすき | 作成日時:2020年4月5日 10時