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6話 ページ7

杏寿郎side




…眠れない。



寝台に寝転がり早2時間。


いつもなら布団に入るとすぐに寝られるのだが今日は妙に目が冴えている。
 

千寿郎が家に帰り、この屋敷にいるのは俺とAだけになってしまったが
仲直りも済ませ、今晩は俺の好物のさつまいもの味噌汁を作ってもらった。




あれはうまかった。

Aの作るものは全てうまい。

彼女には料理の才能がある。





先程、彼女は俺の事を男として認識していると言ってくれたが、認識と意識は違う。


俺は彼女に意識をしてほしいのだ。



…………最低限、簡単に一緒に風呂に入るなどと言わないくらいの意識は持ってほしい。



………Aは少し男に対して抜けているところがある。

まあそこも可愛いのだが!




夕食時に求婚まがいの事を言ったり
Aのような嫁がほしいなどと言ってみたりしたが
彼女の反応はこれと言ってなく、俺が悲しい思いをしただけだった。





彼女にとって俺はただの幼馴染なんだろうか。






…………少し月でも見に行くか。




この靄ついた気持ちを晴らすため、縁側へ月を見に行くことにする。





廊下を歩いていると、縁側に腰掛けながら空を見上げるAの姿があった。




彼女の横顔は少し儚く、風呂上がりなのか白い肌に頬が少し赤くなっているのがわかる。

睫毛が優しそうな瞼を縁取り、
薄い茶色の透き通るような瞳が月の光に反射し輝いている。



彼女は本当に綺麗だ。

彼女の瞳も、唇も、手もこの世の誰のものより美しい。



俺の名前を呼ぶ鈴のような声も

少し茶目っ気があってお転婆なところも

不思議で何も考えているのかわからないところも

実は凄く繊細でそれでいて芯が強く、己の信念を突き通すところも



全てが愛おしい。




生まれた時からずっと一緒で、Aのいない人生など考える事すらできない。



縁側に座るAは儚くて、そのまま月の光に溶けていってしまうような気さえした。



Aは歩いてくる俺を見つけると、驚いたように目を見開き、白いすらりとした手を振り

後にふわりと微笑んで


「眠れないの?」


と聞いてきた。



その微笑みは月の光が差す縁側に咲いた、白い一輪のからたちの花のようだった。









ああ。









君が好きだ。もうずっと。





心が灼けるような痛みが胸を貫く。




俺は一体いつまでこの想いを持ち続ければいいのだろう。

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おさかなだいすき(プロフ) - ことりさん» ほんとですか!!嬉しいです!!これからも応援よろしくお願いいたします!君のハートに昇り炎天!!! (2021年1月21日 21時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
ことり(プロフ) - 36話思いっきり爆笑しましたwすっごい好きです!!これからも楽しみにしています! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 676d79dd2d (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - はりはりさん» あ!りがとうございます!!! (2020年11月23日 16時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
はりはり(プロフ) - すっごい好きです!!!主さんストーリー作るの上手っ!!!!! (2020年11月23日 3時) (レス) id: 52ba9d7a4c (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - 麗さん» ありがとうございます!!!修正します!! (2020年11月16日 15時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさかなだいすき | 作成日時:2020年4月5日 10時

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