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39話 ページ40

真剣な瞳に見つめられ、胸が詰まるような感覚がした。


『……うん。』



私が首を縦に振ると、村田さんは微笑みながら私を見て言った。



「俺、Aが好きだ。」






黒い瞳が街灯の光を映し、橙色の光が浮かぶ。


「Aが炎柱の事を好きだって事は分かってる。


俺じゃ代わりになれないってことも。」


『……え?』


「わかりやすいし。」


『え……』



「…でも言わないのは男じゃないって思ったから。ただ君のことが好きだ。」




『…うん。嬉しいよ…』

「もし、Aが炎柱と駄目だったら

…俺の事を思い出してほしい。」




『…うん。……ありがとう、ごめんね…』


涙が頬をつたうのを感じた。
なんか最近泣いてばっかだな。




「泣くなよ。Aの泣き顔見たくないし。」



村田さんは笑いながら私の涙を拭ってくれる。




……どこまでいい人なの?

彼の気持ちを思うと胸が痛くなる。



『わ、私そろそろ行かなきゃ』


慌ててそう言い、歩き出そうとすると村田さんに止められた。



「まさかこんな暗い中一人で行くつもりか?送ってくに決まってんだろ」

そう言って私の手を握り歩き出す。






……杏寿郎とは一緒になれないんだ。

このまま好きでいても辛いだけ




歩きながら現実を思い出す。

彼はもっと良い家柄の女性を娶る。




ああ、叶わない恋なんてするもんじゃない。

独りよがりで苦しいの。




この気持ちを一生持ち続けるのは辛すぎる。
 




胸が痛くなると同時に村田さんが私の手をより強く握った。





「俺は、何があってもAの味方だから。」









ねえ、





貴方を好きになりたいよ。




熱い想いを持っていても、そんなことが言える貴方を。







でも分かるんだよ。
 
私、杏寿郎の事を死ぬまで愛してるって。

好きで好きで堪らない。





この気持ちを何処に捨てればいいの?







無理だよ。







私も、村田さんも、同じなの

叶わないと分かっていても想ってしまう、愛してしまう。





いっその事忘れたい。出会わなければよかった。


人を好きになるのは簡単だ。









でも

好きな人に愛してもらえるって奇跡なんだよ





「いつまでもAを待ってる。ずっとだ。」






そう言って送り出してくれる村田さんの顔を別れ際に振り向いた。








涙を拭う彼の姿が



涙でぼやけた目の端に映った。









いつまでも。









こんな気持ち、いらない。

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おさかなだいすき(プロフ) - ことりさん» ほんとですか!!嬉しいです!!これからも応援よろしくお願いいたします!君のハートに昇り炎天!!! (2021年1月21日 21時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
ことり(プロフ) - 36話思いっきり爆笑しましたwすっごい好きです!!これからも楽しみにしています! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 676d79dd2d (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - はりはりさん» あ!りがとうございます!!! (2020年11月23日 16時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
はりはり(プロフ) - すっごい好きです!!!主さんストーリー作るの上手っ!!!!! (2020年11月23日 3時) (レス) id: 52ba9d7a4c (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - 麗さん» ありがとうございます!!!修正します!! (2020年11月16日 15時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさかなだいすき | 作成日時:2020年4月5日 10時

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