煉獄さんはむつかしい

26話 ページ27

杏寿郎side


……好いた女の前でこんな事を言わされるなど、もはや拷問だ。



…しかし悪いが俺も男で…
……だが…やはりAの前でこんな事、




顔が熱い。



……情けない。こんな顔を惚れた女に見せるなど…





『…やはり俺は君を遊郭へはやれない。』


それを聞き顔を歪ませるA。
だが、これだけは絶対に譲ることができない。





いくら男女の営みがわかっていようが…

男に接吻されそうになり、泣きそうになっていたAのような純真な乙女に、囮とはいえ遊女のような仕事がつとまるだろうか。





何より、君が他の男に触れられるなど

…我慢ならない。




着物を着て少しの白い肌を露出し、化粧をした
美しく艶めかしいAを男たちが最後までせずに見逃すだろうか。




　
…俺ならできない。







　
接吻しようとする男を見るだけで腸が煮えくり返る思いだった。


ましてや身体を…他の男に…





恋人同士でもないのに厚かましいとは思う。

胸が締めつけられる。






…君にとって俺は、ただの幼馴染なんだろう。









しかしそんなことに気を回してやれるほど今の俺には余裕がない。

　




…お願いだ。聞き分けてくれ。



　
『いくら君がなんと言おうと、
遊郭に行かせるなんてことは絶対にできない

…わかっているつもりでも、きっと君には無理だ。』



その言葉にAは、黙って怒りを募らせているのか顔を紅くする。






その姿すら愛しいと思ってしまう俺はもう、駄目なんだろうな。




「…私は、杏寿郎違って杏寿郎の心配なんかしてない。」


Aが怒ったように言った。
……ではなぜ俺を遊郭に行かせたくない？




「………あなたが！杏寿郎が…遊女さんとはいえ、
他の女の人にっ…！触れられるのが嫌なの！嫌、なの！」



わかってよ…と小さく呟くAは耳の先まで真っ赤だった


俺の為に頬を染め、他の女性に触れられるのが許せないという、俺の幼馴染。




………駄目だ。






杏寿郎。ここは我慢しろ。我慢だ。堪えるんだ





俺が硬直しているのを見たAが俺の着流しの裾を引っ張り






涙を溜めた上目遣いで頬を染めながら、畳み掛けるようにこう言った。



「…お願い。

杏寿郎…私以外の人にあなたを、触れさせないで…

……行かないで杏寿郎…」









　



俺の頭の中で何かがブツンと切れた音がした。









杏寿郎side終わり！

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