煉獄さんはむつかしい

7話 ページ8

「好きな男がいるのか？」


急に床に倒れた幼馴染が心配だったけど、
今はその理由を尋ねるより先に、幼馴染へ返事するべきだと直感的に理解した。





『…………あー』

いやあんたですけどね
いや目の前のあんたですけどね。


ずっと好きなのに気づいてくんないし、むしろなんか好きな男いるって言ったら応援してくれそうな感じまである。



でもそんな簡単に…告白なんてできるわけなくてさ、できてたらこんなに辛くないんだよ。



『…もう。言ってみただけだよ
………いないよ。好きな人なんか』


思わず嘘をついてしまう。



いや…

別に好きな人がいるかくらいなら言ってよかったかな…

うん。言っとこ。




『ねえ、さっきの嘘。ほんとは』


「っそうか！悪かった！

取り乱して床に倒れてしまった！！
わははははは！」






私の言葉を遮って杏寿郎が笑う。


めちゃくちゃ笑ってるし。
笑った顔も男前。






じゃなくて。
……あからさまにほっとしてるよね。






……なにそれ…どういう気持ち？

すごい勝手だけど、そこまで笑われたら馬鹿にされてる気がしてくる。





聞き返してやろう。





『……杏寿郎は、あんなに重い刀持って人のこと鬼から守れるなんて凄いかっこいいと思う。


そんなに男前で笑った顔もかっこよかったら、女の子なんてよりどりみどりなんじゃないの？

……杏寿郎にはいないの？好きな子。』



早口でまくしたてるように言ってしまった。
黙って杏寿郎を見る。





いや…何も言わないし……なんか言ってよ。

なんかいまさら恥ずかしくなってきたじゃん。






『…ちょっとなんか言って』
と顔を覗き込んだ。








『う、わ…赤…』


そこにはいつもの笑顔のまま、耳まで真っ赤な
顔の幼馴染がいた。






え？顔赤。
こんな顔の杏寿郎初めて見た…




「………今のような言葉、誰にでも言っている訳ではないだろうな？」

少し低い声で私を見て言った。
眼光が鋭い。





『……！(うん。他の人には言ってない)かわいい！』



うわ間違えた。かわいい！とか言っちゃったわ。ベタ過ぎ。





…怒られる……？
恐る恐る杏寿郎を見た。




杏寿郎は目を大きく開いて笑顔のまま硬直したあと、


「…………全く、君は本当に……」
額に手を当てながらため息をついた。









すると急に肩を優しく掴まれ、



　 耳に杏寿郎の吐息がかかった

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