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巨大な鬼の亡骸を背に、舜太と太智は、血まみれで倒れる仁人に駆け寄りました。
舜太「おい！大丈夫か？！」
太智「仁人先生！！しっかりして！！」
彼は腕と腹に鋭い棘を受け、そこから血がじわじわと流れ出しているのです。
舜太「くそ！おいあんたどうにかしろよ！頭いいんだろ？！」
太智「そ、そんなこと言われても、おいらの智識だけじゃ、どうしようも……」
たとえ医学に対する智識があっても、それを実践するだけの経験も技術もありません。
そんな者が医学のまねごとなどしても、決してうまくいくわけないのです。
舜太「そんな……」
いつも、舜太は仁人や太智のことを少しばかりないがしろにしてまいりました。
何かあるたび、なぜついてくるのか、とか、必要ないなど。
それなのに、今は地に伏す仁人を前に、ただおろおろして心配しているのです。
これまでならば、きっと倒れた仁人をみても、何も思わなかったかもしれません。
鬼を討つことしか頭になかった舜太の中に、これまでの旅で一緒に過ごしてきた彼らの存在が、確かに大きくなっていたのかもしれません。
舜太「頼むよ……"仁人"！！目を開けてくれ！！」
「また、名前を呼んでくれましたね……」
その時でした。
確かに、はっきりと、優しい声が聴こえたのです。
舜太「っ！」
視線の先、そこには、仁人が優しい微笑みを舜太と太智に向けておりました。
太智「仁人先生……！良かった……！大丈夫？！」
仁人「ご心配……おかけしました……。なんとか……大丈夫……ではありませんが……」
萎れた棘が抜けた後の傷口を押さえながらも、仁人はどうにか動くこともできるようです。
どうやら傷はそう深くなく、急所は外れておったようです。
それでも、激痛のあまり気を失いそうではありましたが。
佐野「おい……」
すると、今まで背を向けていた佐野が頭だけこちらを向け、仁人に尋ねてまいりました。
佐野「あいつらは……今どこに……」
彼が案じていたのは、自らが世話を行っていたあの孤児たちでした。
仁人に連れられ、安全な場所へ連れていかれたということでしたが、佐野はその所在が気になるようでした。
仁人「あの子らならば……森の外れにおります……。案内いたしましょうか……？」
佐野「……。いや……。その代わり……お前らに頼みがある……」
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年7月13日 21時
