M!LKで桃太郎其の弐 (ページ43)

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鋭い棘は木の上で弓を構える太智の足を射抜き、さらに舜太の肩に突き刺さりました。
太智はまっさかさまに木から落下し、痛みにもだえ、舜太も立っていられなくなり、その場でうずくまりました。

太智「ぐっ……ご、ごめん……おいらの……読み違いだった……」

まさか毒すら受け付けず、ここまでの再生能力があるとは、太智にも予測できませんでした。
しかもこんな反撃に出られるとは。
よもや舜太たちは最大の危機にひんしておりました。
さらに鬼はその巨体をふるわせ、新しい棘が体中から生えていきます。
そしてその棘が、毒で動けぬ佐野のもとへも今、到達しようとしておりました。

佐野「っ！」

しかし、その棘が佐野を貫くことはありませんでした。
目の前で、その腕と腹に棘を喰らう、仁人が立ちふさがっていたのですから。

仁人「ごほっ……」

血を吐き、腹と腕に棘が痛々しく突き刺さった仁人は、その場で力なく倒れました。

佐野「仁人……！お前……なぜ俺をかばった？！」

仁人「私は……医者です……。医者が……人の命を救うのに……理由などいりませんよ……」

佐野「……」

やがて、鬼が佐野のほうへ、ゆっくりと歩み寄ってきておりました。
全身が硬い棘に覆われ、初めにあらわれたときとはまるで違うその姿。
そして、その大きな腕を突き出し、佐野に迫ったのです。
しかし。
その腕は佐野に届くことはございません。
佐野が握った岩融が、その腕をしかと受け止めておるのですから。

佐野「義を見てせざるは勇無きなり……！」

一瞬にして、この場の空気が変わりました。
佐野からほとばしる殺気が、この場を支配していきます。
そして、佐野が岩融をわずかに振るっただけで、鬼の腕はズタズタに切り裂かれ、血しぶきを上げておりました。
ようやく、佐野の体の毒が抜け、体の自由がみるみる戻ってきたのです。
鬼の腕は再び再生を始めています。
けれど、佐野がさらに岩融をふるうと、その腕は木っ端みじんに吹き飛んだのです。

佐野「お前ら、俺が人を斬れないと言ったな。確かに俺は人を斬らん。
なぜならば、斬れば、跡形もなくなってしまうからだ。
それではあまりにも無慈悲だろう？

しかし、鬼ならば話は別だ。
このような醜い異形がどうなろうが俺の知ったことではない。

だから見せてやる。
本当の岩融の力を」

そういうと、佐野は背中に担いだ棒を手に持ち、その先端に、岩融の刃を結合させたのです。