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目の前にいる数人の人間よりも、この奥に何人もの人の臭いをかぎつけたのです。
洞穴の中には、まだ何人もの子供たちが怯えておるのです。
佐野「や、やめろ!!やめてくれ!!!」
その叫びもむなしく、入り口をふさいでいた大岩さえ、鬼には小石同然。
大岩を軽々と吹き飛ばすと、その中に腕を突っ込んで行きました。
佐野「動け……くそ……!」
気力だけでしびれる体に鞭打ちますが、やはり体は動きません。
その間にも、鬼の手には何人もの子供たちが握られ、泣き叫んでおりました。
そして、鬼は大きな口を広げ、彼らをそこへと運んでいきます。
もう、どうすることもできませんでした。
佐野は自分の無力さを呪いました。
こんなときに、まるで体は動きやしない。
これも、これまで犯してきた数多の罪のせいか。
佐野は、自分も、そして、神さえも恨んだのです。
佐野「やめろおおおおおお!!!」
刹那、風を切る音が響き、鬼の目に、何本もの矢が突き刺さりました。
突然の攻撃に、鬼はひるみ、つかんでいた子供たちは地面にまっさかさま。
けれどその下で、その子らを受け止める人影が見えたのです。
仁人「くっ!危機一髪でございますな!」
舜太「なんで俺がこんな子供を助けなくちゃいけないんだよ!!とっととこの鬼ぶった斬るぞ!!」
仁人「それはこの子らを安全なところへ連れて行ってからです!!」
舜太「ちっ!!面倒ったらありゃしないな!」
仁人「とかなんとか言いながらしっかり助けているではありませんか!」
舜太「う、う、うるさいんだよ!!」
さらに木の上の枝から、数本の矢が飛び出し、大きく開いた鬼の口内を射抜いていきます。
太智「そんなにお腹すいてるなら、おいらの矢をたらふく御馳走したげるよ!!」
そこには枝から枝へ飛び移り、矢を射って鬼の気をそらす太智の姿。
仁人「さ、今のうちに、私と一緒にこちらへ!!すぐ戻ってまいります故、舜太殿、太智殿、しばらく頼みましたぞ!」
そして、仁人は助け出した子供たちを連れて、森の奥へ消えて行きました。
舜太「言われなくとも!!」
この時を待ってましたとばかりに、舜太は腰に携えた刀を抜き、鬼に構えたのです。
黒く妖しく輝く刃。
その切っ先がしっかりと鬼を狙っておりました。
太智「大将、しっかり頼む……あれ……?」
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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月13日 21時