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時は
舜太が商店を出ていった後の事でした。
仁人は太智の腹の傷が再び開いてしまったのを見て、もう一度手厚い看病を施しておりました。
仁人「無茶をしてはなりませぬよ太智殿。鬼はきっと舜太殿が斬ってくれます。それに、これ以上血を流すと、命の危険が」
太智「ありがとう……。でも、どうしてもおいらも行きたい……。それに、あの帝は本当に強いんだ……。一人で立ち向かって勝てる相手じゃない……」
仁人「自分だってお一人で立ち向かったのでしょう?」
太智「それは、色々考えても、そうするより他なかったからだ……。でも今は違う……。見たところ、あなたは薬草の他に、毒草の扱いにも長けていると見た」
仁人「っ!?何故それを……」
この時代、医者が致死量を超える毒を取り扱うことは、あまり好まれるものではありませんでした。
毒の付いた手で患者に触れることなど、もちろんご
禁断のことだったのです。
けれど、とある理由により、仁人は昔から薬草と同じぐらいに毒の扱いにも長けておりました。
しかし、なぜ太智にそれが分かったのか、仁人は不思議でなりません。
太智「簡単なことだよ……。
あなたは、おいらの手当てを始める前に、普通の医者の何倍もの長さの間、手を洗っていた。
その手に血なんか付いてないにも関わらず。
おいらが知る限り、あんなに長く手を洗うのは、毒を落とすためだけだ……。
だから、きっとあなたは毒を落とすための手洗いが癖づいてるんだろうってそれを見て思ったんだ……」
仁人「……。たったそれだけのことで、よく、お分かりに……。太智殿は聡明でいらっしゃるのですね……」
太智「いいや……。ただいらない智識を良く知ってるだけだよ……。それより、その毒の智識があればあいつを油断させられるかもしれない……。
あなたのおかげで傷の痛みも随分引いた……。だからお願い、おいらも帝の屋敷に行かせてくれないか?」
仁人「……わかりました。舜太殿の助太刀とまいりましょう」
太智「ありがとう!じゃあ、まずは準備だ……。今日の風向きは南西……。毒を炊いた毒煙を風上から流せば、あの鬼を怯ませられるかもしれない。
丁度風下になるよう、おいらが得意の弓であの鬼を誘導する」
仁人「承知しました。それではまいりましょう……!」
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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月13日 21時