第四話 ページ1
明安京を旅立って二日目。
舜太、仁人、太智の三人は、森の中を地道に歩いておりました。
舜太「なんで俺に付いてくるんだよ……」
太智「好きにしなって言ってたじゃん。おいらは大将に付いて行きたいから付いて行ってるだけ」
舜太「はぁ……。俺は大将じゃないっての……。まったく、めったなことを言うもんじゃないな……」
仁人だけでも十分迷惑こうむっていたのに、二人も付いてこられては、舜太の気も滅入る一方でした。
それほど、舜太は他人との関わりが得意ではなかったのです。
仁人「それにしても太智殿。その大荷物は何が入っているのです?」
太智「ああこれ?これ、大将と仁人先生にお礼の品!」
そう言いながら、太智は背負っていた大きな風呂敷包みを二人の目の前に広げてみせました。
大きな風呂敷の中に入っていたもの、それは、何やら鎧のようなものでした。
仁人「これはまた高価な……。さすが都育ち……」
太智「言っただろ?鬼を倒せれば、おいらの家のもん全部持ってって良いって!」
舜太「これ、本当にあんたの家から持ってきたの?また盗品じゃないだろうな?」
太智「やだなー、おいらをそんな盗人みたいな言い方するのはよしてよ」
舜太「俺の刀盗ってっただろ!」
太智「ごめんってば!」
仁人「いつまでもぐちぐちと、器の小さいお人だこと」
舜太「う、うるさいな!でも、常日頃からあんな盗みを働いてたんだろ?人相書きだって出てたじゃないか!」
都に辿り着くまでの道中にあった立て看板。
そこには近辺に出没するという盗賊の人相書きが貼ってあったのを、舜太は覚えていました。
目の前にいるこの太智とは、似ても似つかない凶悪な出で立ちをしておりましたが。
太智「あぁ、あの人相書きはおいらじゃないよ!あれは本物の盗賊!中津国全土で盗みやら殺しやらを繰り返す大悪党って聞いたことあるよ。
なんでもかなり腕の立つ盗賊で、奉行もなかなか捕えられないとか。確か名前は―」
仁人「まぁ、そういう話は置いておいて、この防具、舜太殿に似合いそうですよー……」
舜太「うーん……」
太智「大将ってば、そんな疑わしい目で見ないでよ!この防具は本当にちゃんとおいらの家にあったものだから安心してくれ!おいらの家は武具を作ってたからね!それに、鬼とあんな戦いをするのに、そんな薄着じゃ心もとないでしょ?
鬼にこんな防具が通用するかはわからないけど、ないよりましだと思って」
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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月13日 21時