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今より三年ほど前の話だ
元々帝様は、おいらのような庶民街の子供とも分け隔てなく一緒に遊んでくれるような、そんな心優しきお人だった
そんな帝様がある日、他所へ数日間の出向をされることになった
おいらの親も、都の住人や家来の兵たちも、帝様の出向の為に慌ただしくしていたのを覚えてる
そして数日後、帝様がこの明安京に戻ってこられたのだけど、出向前の帝様とは、まるで別人のように様変わりしていたんだ
見た目は帝様と何も変わらないのに、とても横暴で残虐な性格になっていたんだ
おいらにはわかっていた
それが本物の帝様ではなく、帝様そっくりの偽物だと
でも、誰もそのことについて意見しなかった
何故なら、そういう人間は反乱分子として、何のためらいもなく殺されていたからだ
その中には……おいらのお父とお母もいた……
それからすぐに、帝様はこの都に壁を作り、明安京を封鎖せよと命を下した
建前上は、外からの鬼の侵入を防ぐこと、だったけど、それも違う
門番が出入りする扉だって、帝様の手のかかった連中しかいない
もし外に出れば、門番に殺されるか、帝様直々に殺しに来る
あの帝様は、そうすることで中からおいらたちが逃げられないようにしたんだ
だって、あの帝様にとって、おいらたちは格好の餌なんだから
そう、おいらは見た
あの帝様が人間を喰らうところを
あいつは鬼だったんだ
鬼が帝様に化けて、この都を支配してしまったんだ
その強大な力で、誰もあいつに逆らえなくなった
皆、あいつのする傍若無人に対し、見て見ぬふりをするようになった
皆、あいつの支配に苦しんで、助けを乞う他人の声を聞かなくなった
皆、あいつの反撃が怖くなって、意見するにも口をつぐんでしまった
皆、あいつに対して、見ざる、聞かざる、言わざるになってしまったんだ……
おいらも含めて……
兵たちも、全部あいつの言いなりになって、華の都と呼ばれた明安京は、みるみる活気を失い、このありさまさ
それに、門番が一度、帝様の目を盗んで近くを通りかかった軍隊に助けを求め、その軍隊があいつと戦ったんだけど、一瞬のうちに全滅させられた
三百の軍勢に対し、あいつはたった一人だったのに
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年7月12日 18時
