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同じころ、医者である仁人のいた村からさほど離れていない十町ほどの森の中、舜太は一人大きな木の木陰で座り込んでおりました。
先ほど聞かされた生きる意味、というのを、舜太なりに色々と考えていたのです。
結局は何も思い浮かばないのですが、それでも、彼は必死に仁人の言っていた言葉の意味を理解しようとしていました。
命を繋ぐ。
なぜそんなことをするのか。
それに何の意味があるのか。
やはり分かりません。

舜太「はぁ……」

一人ため息をつき、舜太は仁人の村の方角にふっと目をやりました。

舜太「っ?!」

けれども、そこで舜太が目にしたのは、赤い夕焼け空に浮かぶ黒煙。
この方角は、間違いなく仁人の村の方角からでした。
異様なほどに太く黒い黒煙は、窯から出る煙などではありません。
何かが激しく燃え盛る、不穏な煙です。
舜太は感じました。
お爺さんとお婆さんの家に戻るときと同じような胸騒ぎを。
そして、舜太の足は自然とあの黒煙の方へと向かっていたのです。
落ちた枝につまずきながら、落ちた葉っぱで滑りながら、舜太は駆けました。
風のように早く、雲のように軽く。
更に体を軽くしようと、幾重にも巻かれた包帯を、舜太は引きちぎりました。
包帯の中で、舜太の傷は、もうすっかり治っている様でした。
やがて、森を抜け、村が見えてきます。
しかし、そこはさっきまでの村とは言いづらいものに様変わりしていたのです。
家々には炎が燃え移り、地面には焼け死んだ人の死体が転がっています。
そして、その死体を食い漁る、醜い巨体。
鬼でした。
お爺さんとお婆さんの(かたき)である鬼が、この村の住人も、全て殺して回っていたのです。

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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月12日 18時

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