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仁人「なんとまぁ、すごいですねー」

舜太「感心してる場合か!!俺達もこの壁登るぞ!」

仁人「それは無理ですよ。御覧なさい、この高さ。岩山を登るのとはわけが違うのですよ?」

舜太「ならどうするんだよ!」

仁人「諦めましょう」

舜太「ぅおおーい!!馬鹿言え!」

仁人「冗談ですよ。しかし、どうしたものか……」

まるで猿のごとくこの防壁を飛び越えた太智のような身のこなしは不可能。
かといって、この壁を登る術もなければ、抜け穴などもありません。

仁人「うっ……やはりこの防壁の向こうから、ひどい血の臭いが……」

舜太「俺にはやっぱり臭わないけどな……。中で一体何が……。早く刀も取り戻さないと……」

鬼を唯一斬れる刀。
あれが無ければ、鬼と戦うことは恐らく困難を極めるでしょう。
一刻も早く刀を取り返さねばなりません。
それに、仁人が言っていた、血の臭いというの気になるところです。
この防壁を越える策を練るべく、二人はくまなく防壁を見て回り、考えました。
その時です。
防壁の一部、人が屈んでようやく通れそうな程の扉が開き、中から武装した兵士が二人、出てくるのが見えました。

仁人「舜太殿、隠れて!」

舜太「え?な、何?」

仁人「ほらあそこ。きっとこの都の門番です。どうやら時折ああやって外の様子を見張っておるんでしょうな」

兵士たちは、辺りをざっと見回すと、すぐに来た道を引き返し、小さな扉を屈んで潜って中へ戻っていきました。

舜太「ふーん……。で、それが?」

仁人「はぁ……。舜太殿は阿保(あほう)なのですか?」

舜太「な、何だと?!」

仁人「あの小さな扉が開けば、私達でも中に侵入することができましょう。そして、それを実行できるのは恐らく一度きり。それをしくじれば、打ち首は免れません」

舜太「……?うん?それで?」

仁人「はぁ……。もうよろしい。舜太殿は私の言った通りにしてくださればそれでよい」

舜太「なんか腹立つ言い方……」

仁人「とにかく、次にあの扉が開くとき、それが決行の時になりましょう」

そしてしばらくして、扉は再び開かれました。

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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月12日 18時

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