検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,842 hit

殺人鬼と鬼 ※途中 ページ1

真っ暗闇、街灯だけが己の道を照らしてくれる。


点滅しだすそれを、茅野Aはジッと見つめていた。


深く被られたキャップに、サイズ違いのダボッとした服。


その姿と、少し中性的な顔のせいか間違えやすいが女である。


時刻は深夜の三時。


彼女は、とある人を待っていた。


いや、正確には人ではないのだが。



「……あの」



突如聞こえた弱々しい声に、Aはため息をつきながら振り返った。


端麗な顔の眉間には深いしわがよっている。



「あんたがそうなの?」

「は、はい……」



目を伏せて明らかに怯えている少年。


Aはこういう輩が好きではない。


ただでさえ寝不足で機嫌が悪いのに、依頼者に怯えられるとは何事だ。


自分はただ、与えられた仕事に来ただけなのに。


そして何より今回の依頼者は面倒くさい。


依頼の電話を受けた時、この少年は言ったのだ。「僕は人ではありません」と。


一種の厨二病だろうが、こんなに面倒くさいものはない。



「……その角何?」



怪訝な顔でAが問う。


昔童話で見たような二本の角が、少年の頭から生えていたのだ。


どうせ付け物だろうとまたため息を一つ溢すが、少年の顔を暗くなる一方だった。



「暗いなー。私、暗い人嫌いなんだけど」

「ですよね……」

「だからそういうのいらないから」

「すみません……」



Aの顔がさらに苛立ちへと変わっていくのを少年は気づいていない。



「うざ。こんなの外しなよ」



我慢できなくなり角へと手を伸ばした。


少年の体が上下に揺れるが気にしない。


そして、手が触れた時だった。



「や、やめて!」

「えっ」



少年がAを突き飛ばし、バランスを崩した二人が地面へ倒れこむ。



「いっ……」

「ごめんなさ──」



蒼白になっていく少年。


体がふるふると小動物のように震えていた。



「目がっ!」



真っ赤なそれがAの瞼から流れ落ちる。


角が目に当たったのだ。



「……平気」



そう言うがAは苦し気に目を押さえていた。


血が止まることはなく、指の隙間からも赤い血がポタポタと落ちる。



「もうやだ……こんな角いらない」

「……」



Aが角に再び触れる。


今度は拒絶されることはなく鋭利なそれをまじまじと見れた。



「……ごめん」



片目を瞑ったまま、Aが少年を抱き締めて言った。


言葉の意味がわからず少年はただ戸惑う。


人に優しくされたのは初めてだったのだ。

狂者→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:短編集 , オリジナル , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:緑風椽 | 作成日時:2014年9月3日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。