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理解ができたのだろう、
顔を上げたその瞳には
すぐに涙が溢れ出してきた。

再度頭を下げた彼女は、
足早に湯汲みへと向かった。

お湯の音と共に叫ぶような泣き声が聞こえた。

今まで沢山の悲劇を目の当たりにしてきた。
なぜ、彼女を俺は連れてきたのだろう。


そう考えていた時、
もう既に泣き声は聞こえなくなっていた。

女の湯汲みはどれほどかかるかを知らない。

ある程度時間が経った所で
湯汲みの扉の前で柱に背を預け
出てくるのを待っていた。

中から音はする、だから気を失っているわけでは
なさそうだ。

扉が開いた。
俺は横目で姿を確認した。


俺は、自分が息を呑んだのがわかった。

あの時の姿とは想像がつかないほど
真っ白で透き通った肌、
まつ毛の長い大きな瞳、
薄らと色づいた唇、
整った美しい顔立ち、


「ありがとうございました、
 すぐ準備します」


俺を見るや否や、
頭を下げて居間に向かう手を
反射的に掴んでいた。


「…あの…」


俺は、何をしているのかはわからなかった。
だが、離したくなかった。



義『…俺がいる。1人ではない。
  ここにいればいい』



そう言った時、彼女の目は大きく見開かれた。


「そ、んな…」


遠慮したい気持ちがあるだろう、
躊躇いながらも手を離す彼女。

俺は言葉を続けた。


義『…お前は、一人じゃない』


泣き止んだはずの瞳から
また涙が溢れ出していた。


鼻を啜りながら、彼女は頷いた。

何としても、守りたい。

そんな気持ちが俺の中にあった。



居間へと戻り、お互い無言で座る。


義『…名前は何と言う』

「Aです…」


義『俺は冨岡義勇だ、好きに呼べ』


「義勇、さん」


なぜか名前で呼ばれたことに擽ったい気持ちになる。


今日はゆっくり休め、
そう言いながら立ち上がると
服を掴まれていることに気付いた。


「あの、ごめんなさい、
 一人じゃ寝れそうになくて…」


俯きながら遠慮がちに言うその姿に
悪い気はしなかった。

義『わかった、ここで寝よう』

受け入れることに抵抗はなかった。
それで守れるなら、と。


布団を二組敷くと、
お互い横になる。

暗闇の中でもわかる、
Aが俺をチラチラと見ているのを。

義『…こっちに来い』

会ったばかりなのに、
なぜか心の内がわかってしまった。

その言葉に直様入ったきたA

余程一人が怖いのだろう、
暫くはこうやって寝るか
と思いながら感じる体温に
心地良くなり、目を閉じた。

5→←3(冨岡視点)



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作者名:momopara427 | 作成日時:2022年4月14日 10時

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