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3(冨岡視点) ページ4

俺はこの近くの山に鬼が出ると
任務を受け街の中を歩いていた。

こんなにも賑わっているのに
ここの街には被害が出ていない。

街の中を調査している時、
街から離れた一つの山から
凄まじいほどの鬼の気配を感じた。

今までで一度も感じたことがない。

俺は直様街を抜け出して
山の方へ駆け出していく。


妙だ、気配が不安定になっている。

ふと足を止め、周りを見渡す。

気配が消えた。
逃げられたのか、誰かが斬ったのか。



気を研ぎ澄まし、集中していると
前から足音と息が聞こえてくる。

鬼の気配はしない。

刀に置いていた手を下ろし、
じっと前方を見つめる。


女が走ってきている。


泥だらけの足、擦りむいたような傷がある腕。
転んだのであろう、土がついた顔。

絶望感に満ち溢れた表情。

俺は、全てを察する事ができた。

俺が、あと少し早く街に来ていれば。


彼女は転びそうになった、
これ以上傷付けたくないという気持ちに駆られ

俺は転ぶ前に彼女を抱き上げた。

きっと、一人なんだろう。


隠に処置を依頼すればいいはずだった。
だが、俺はそれをしなかった。


義『(俺の家に)ついてくるか』

気づいた時には言葉を発していた。

なぜか、手放す事ができなかった。



なんでもいい、そう言った彼女は
力尽きたのだろう、目を閉じ話さなくなった。



俺は極力揺らさぬよう、屋敷へと運んでいった。

屋敷の中に入ると、
そっと横にさせる。

明るい場所で見た彼女は、
泥だらけで、傷だらけだった。

起きたら湯汲みをさせるか、と湯を沸かしにいく。

それからどれだけの時間が経ったかは
わからなかったが被せていた羽織が動いた。

義『…起きたか。』

彼女は痛む身体を起こすと
目を合わせる事なく頭を下げた。

「助けていただき、ありがとうございます…
 すぐに出ていきます、ごめんなさい」

小さく、弱々しい声。
震えている身体。

義『…身体をきれいにしてから行け。
  そのままではどこにも行けない』

引き止める理由は見当たらなかった。
心のどこかでは、
ここにいろ、と言いたかった。


俺は手拭いと浴衣を手渡し
湯汲みがある場所を指差す。


義『あそこは少し離れている。
  大声を出しても聞こえない』


泣きたいのだろう、現実を知ったのだろう、
我慢せずに現実を受け止めてこい。

そう告げるように言葉を放った。

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作者名:momopara427 | 作成日時:2022年4月14日 10時

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