舞い上がる【鬼滅の刃】 (ページ3)

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自分自身が温かくなっていくのを
感じていた。
こんなに残酷なことが目の前で起きているのに。

気が付いたら
男の子の身体が目の前にあった。

絶望と恐怖で身体が動かない。

無『人間は、弱いな』

その一言で手を振り翳された

あ、殺される。

そう思った時、男の子が苦しみ始めた。

無『な、んだ、これは…』

目の前で手が止まっていた。
苦しそうに眉を顰めながらも
動こうとしている。

逃げなきゃ…逃げなきゃ…

心の中で呟いていたのに、
足が動かない。

お父さん、お母さん、助けて。

(逃げなさい。早く、もう動いてしまう)

心の中でお父さんの声が聞こえた。

その時、驚くほど身体が軽くなる。
私は咄嗟に家を飛び出していった。

お父さんとお母さんの最期の姿を
見る事ができなかった。

鼻につくあの匂い。
吐き気がする。

裸足のまま、山を降りて街へと飛び出す。

なんで、なんで、なんで

ずっと心の中で叫んでいた、
涙は出なかった。

私はあまり走った事がない、
だから街へ着く前に足がもつれ始める。

息も上手く吸えない。

くるしい、のどかわいた、
あしがいたい、ひとりにしないで

その時、少し先に男の人がいるのが見えた。
見た事がない、変な服。

だれでもいい、たすけて

私は藁をも縋る思いで
男の人の所へ駆け寄った、はずなのに。

あと少しの所で躓いてしまった。

嗅いだことのない、いい匂い。

あれ？痛くない…

ボーッとする意識の中、
男の人の腕の中にいる事がわかった。

「おねが、助けて…
　おとさ、おか…さん、ころされ…」

荒い呼吸の中、嗚咽が出そうなくらい気持ち悪い。
意識が飛びそうになる。
男の人の服を力のある限り強く握り締める。

義『…ついてくるか』

何かを男の人が言っていた。
でも、わかんなかった。

まだ腕の中にいるということは、
きっと悪いことは言われてない。

もう、なんでもよかった。

「な、んでもい…」

そう言った私の記憶はここで途絶えた。