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「…っ、A、」
薄暗い部屋に弱弱しい声。
足を踏み入れて、彼の傍に寄りそっと膝の上に頭を乗せた。
その時に、すっかり変わり果てた金と黒のまだらな髪色だった髪は黒一色になってて、白い顔は青白く、そして少し……縮んだ?
「佐久間さま、これはいったい…」
こうも見た目が変わってしまったら突っ込まずには要られなくて、浅く息をしている彼が汗で張り付いた前髪をかきあげて私を見上げた。
「ちょっと体力消耗しすぎて、人間に近づいちゃった」
「え、」
「佐久間の元の姿は妖怪の父ちゃん似。んでもってこっちは、人間の母ちゃん似」
言われてみれば似ているかもしれない。
けど、体力消耗しすぎて妖怪の姿が維持できなくなるもんなんだ。
「なんだか幼くなりますね」
「へへ、嫌い?」
「いいえ、どちらの佐久間さまも佐久間さまだかから」
「…むむっ、そこは好きって言ってよぉ」
「へ、…っ、」
グイッと下から首に回された腕に引き寄せられて、気づいた時には柔らかい唇が触れていた。
少しカサついてる彼の唇、だけど久しぶりの口付けに胸の奥が熱くなった。
「うーん、駄目だわ。頭クラクラするぅ」
パタンと膝の上に逆戻りで、瞼の上に手を乗せてうーうー唸ってる佐久間さま。
相当弱ってるなぁ。
バタバタと足音が段々と大きくなってきて、その足音が誰か分かったのか佐久間さまは手の位置をズラしてそちらに顔を向けると「阿部ちゃんだ」と嬉しそうに口角を上げて微笑んだ。
ふふ、足音だけで分かるなんて。
「佐久間! 大丈夫か?」
バッと顔を覗かせた亮平さんに、ひらりと手を振った。
「阿部ちゃ〜ん、大丈夫よぉ」
「……え、あれ? 佐久間……若返った?」
「にゃひひっ、ちょっと違うけど。阿部ちゃんに近付いたってとこかにゃ〜」
「なにそれ? まあ、それよりお医者さん呼ぼうか? 診てもらう?」
「ううん、もう毒は抜けたから。あとは自力で回復するわ。ねえ、阿部ちゃん、A、」
私と亮平さんの手を握った佐久間さまは、生きていた事を喜ぶように嬉しそうに瞳を閉じて笑う。
「ありがとう、ね」
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ゆきんこ(プロフ) - あきさん» あき様、こんにちは(^^)鬼さん血は抜かれるわ、周りに振り回されるは、姫の扱い雑だわで可哀想になってますね(笑)あれ私も彼の担当なのに可笑しいな(笑)最終的には、主役の二人のお話になるので、鬼さんも姫に癒してもらえることでしょう! (2021年4月6日 13時) (レス) id: 4af061861f (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - ゆきんこ様、こんにちは☆桃鬼さん、違う意味で大変ですね(笑)( ´ー`) にぎやかなのもいいけれど、やっぱり桃姫ちゃんに癒されたいですよね♪ (2021年4月6日 12時) (レス) id: 4aac9fb6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» あき様。こんにちは!そうですね、大変な事になっております。いつも展開があっちゃこっちゃになってて着いてきてもらえるか不安です^_^;この次で正解がわかる予定なので楽しみにしててください☆ (2021年3月17日 12時) (レス) id: 29517f669c (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - ゆきんこ様、こんにちは☆何か、大変なことに…果たして、どちらが偽物なのか、桃鬼さんと殿様は、見破ることができるのか…どちらもそれっぽく見えるから、難しい〜(>_<) (2021年3月15日 11時) (レス) id: 4aac9fb6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ふさん» ふ様、お待たせしました!よく眠れましたか?心の安定剤とまで言われたら、もう頑張るしかないですね!!更新が開かないように頑張ります! (2021年2月8日 16時) (レス) id: 32279ed1b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年12月27日 23時