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「らうるっ、らうる!」
「駄目だっ!!」
ようやく会えたのに、らうるの瞳には私たちは映っていない。
「あーあ、遅かったかな?」
「そんな、」
つまりらうるもあの男性みたいに操られちゃうってこと?
「来るぞっ」
翔太さまが刀を構えたけど、私はその翔太さまの手を押さえ込んだ。
何すんだって見下ろされるけど、らうるを斬らせるわけにはいかない。
「駄目です! らうるは仲間だからっ」
「わかってるけどっ。……じゃあ、どうすんだよ!?」
があああっと大きな口を開けて飛び掛かろうとするらうると私たちの間に佐久間さまが入り込むと、白い腕を差し出してその腕をらうるに噛まれてしまう。
「佐久間さまっ」
力の入る腕に血管がうかびあがる。
「があっ、があっ」
「らうる、ほらお前の大事な人が泣いちゃうよ」
痛みを感じさせない、優しい声色だった。
白い腕に血が伝い畳に幾つもの血の跡を残すほどなのに。
それでも佐久間さまは、らうるに優しく語り掛けた。
「助けに来んのが遅くなって悪かった。もう大丈夫だから、絶対に守るから。ほら帰ってこい」
「ううっ、があっ、」
らうる……らうる……
虚ろな瞳、生きてるのが不思議なくらいに青白い肌。
「らうる」
「ううっ」
そっとらうるを包み込むように抱き締めると、一瞬だけビクッと肩を揺らした。
お願い。
戻ってきて!
らうるはこれからいっぱい幸せにならなきゃいけないんだから、悪い事に身も心も染めちゃいけないんだよ。
だから帰っておいで!
「らうるっ」
「があっ……あ、あ……ぁれ?」
「ふう……間に合ったか」
らうるの顔に生気が戻り、腕から口を離してキョロキョロ周りを見た。
そして目の前で涙する私を見て驚き目を見開く。
「らうる!!」
「……え、あれ? 俺、なんで?」
「もう少し遅かったら、完全に毒が回って操られてただろうな」
「あ、さっくん」
「さっくん言うな! 年上だぞ!」
腕を摩っている佐久間さまによれば、多少だけど佐久間さまの身体の中に蛇女の毒に対する抗体ができているらしい。
それをらうるの体内に入れる事で彼の毒を和らげる事が出来たみたいだけど。
「一か八かでやんすけどね。まあ、まだ無理はしないこった。まだ毒は抜けてないから」
「うっ、なんか口の中鉄臭い…」
「茶ぁ飲むかい?」
「あ、どうも」
え、深澤さんどこからお茶持ってきたんです?
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ゆきんこ(プロフ) - あきさん» あき様、こんにちは(^^)鬼さん血は抜かれるわ、周りに振り回されるは、姫の扱い雑だわで可哀想になってますね(笑)あれ私も彼の担当なのに可笑しいな(笑)最終的には、主役の二人のお話になるので、鬼さんも姫に癒してもらえることでしょう! (2021年4月6日 13時) (レス) id: 4af061861f (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - ゆきんこ様、こんにちは☆桃鬼さん、違う意味で大変ですね(笑)( ´ー`) にぎやかなのもいいけれど、やっぱり桃姫ちゃんに癒されたいですよね♪ (2021年4月6日 12時) (レス) id: 4aac9fb6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» あき様。こんにちは!そうですね、大変な事になっております。いつも展開があっちゃこっちゃになってて着いてきてもらえるか不安です^_^;この次で正解がわかる予定なので楽しみにしててください☆ (2021年3月17日 12時) (レス) id: 29517f669c (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - ゆきんこ様、こんにちは☆何か、大変なことに…果たして、どちらが偽物なのか、桃鬼さんと殿様は、見破ることができるのか…どちらもそれっぽく見えるから、難しい〜(>_<) (2021年3月15日 11時) (レス) id: 4aac9fb6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ふさん» ふ様、お待たせしました!よく眠れましたか?心の安定剤とまで言われたら、もう頑張るしかないですね!!更新が開かないように頑張ります! (2021年2月8日 16時) (レス) id: 32279ed1b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年12月27日 23時