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「どうぞ」
「どうも」
らうるが恐る恐るお茶を出せば舘様はにこっと柔らかい笑みで対応し、その隣の翔太さまは同じ目線の高さではなく、さらに目線を下げた床に伏している。
どうやら落馬した時に腰を強打し痛めたらしくて、ぶすっとしたまま腕に顎を乗せていた。
「大丈夫ですか?」
一応気にして声を掛ければ、ぴょんと顔を上げてにぱっと顔に花が咲いた。
「A、こっちに来い!」
「え、どうして?」
「どうして? 夫が腰を痛めたんだから、妻であるお前が俺を労るのは当たり前だろ?」
おかしな事を言うなと笑ってるけど、私からすれば翔太さまの発言の方が余っ程変だ。
だって私たち婚約破棄したんじゃないの?
「お前もしつけえな。言ったじゃん!Aは佐久間のものになったの! 」
「クソ鬼のもんにさせるか! A、突然の事で戸惑って家出したんだろ?」
家出って。
「えっと、」
そう言えばあの時何も言わずに城を抜け出し、そして佐久間さまに任せたまま帰ってきてしまったから、よくよく考えたら私とても失礼な事をしていると分かって、途端に自分の首は大丈夫なのだろうかと焦りだした。
あわあわと首を触る私に皆の視線が集まる。
「Aさま?」
「ら、らうる! ごめんね、もしかしたら私晒し首にあうかも」
「晒し首? 何かしちゃったの? あ、また神様に供えたおにぎり食べちゃったとか?」
「いやそれ私じゃなくてあっち」
「にゃは!」
てへって頭コツンとしてる場合ですか。罰当たりな。
て、鬼だし関係ないのかな?
「あ、あのぉ、翔太さま?」
「なんだ?」
「そのですね、勝手にお城を抜け出して……すみませんでした!!」
ゴンッと机におでこをぶつけたら、ものすごく鈍い音がした。
「いたひ……」
勢い余りすぎてやってしまった。
起き上がったらおでこにたんこぶが出来ていて、佐久間さまが優しくなでなでしてくれた。
「おーよしよし。痛いの痛いの、あの阿呆殿へ飛んでけっ!」
「なんでだ馬鹿っ」
ううっ、お願いだから事を荒立てないでほしい。
敵対心剥き出しの二人の隣では、私はまるで部外者ですよというくらい呑気にお茶を啜っている舘様が居るし。
「おお、茶柱二本だ!」
「え、嘘! あ、ほんとだ!いい事ありますかねぇ」
「だと良いですねぇ」
何故かそこにらうるが混ざる。
ああ、私もそちら側に混ざりたいです。切実に。
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ゆきんこ(プロフ) - あいちゅんさん» 長くなりましたので、2回にわけてのお返事失礼します。楽しみにしていただいてるようなのに、ご期待に添えずに申し訳ありません(>_<) 裏は載せられませんが、それ以外でも楽しんでもらえるように頑張ります! (2020年12月13日 10時) (レス) id: 47adab0070 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あいちゅんさん» あいちゅん様、大ファンなんて嬉しいお言葉に舞踊っております!ありがとうございます!初夜のお話についてですが、その他の裏のお話しに関しても書き始め当初から制限できるTwitterのみ掲載すると決めておりまして、本番行為はこちらには載せられません(汗) (2020年12月13日 10時) (レス) id: 47adab0070 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゅん(プロフ) - はじめまして。ゆきんこさんの作品大ファンの者です。お願いがあるのですが、私はTwitterのアカウントを持っていないので初夜のお話が楽しめません>_<privatterではなく普通の投稿にしていただけないでしょうか…? (2020年12月13日 4時) (レス) id: bf15d374dc (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 祐莉さん» 照くんや、残りの二人がどのように登場するかも楽しみに待っていてください(^^)最後まで面白かったと言ってもらえるように頑張ります! (2020年12月3日 12時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 祐莉さん» そうですね。新章では、前回活躍してくれた二人は出てこないのですが、その代わりに前半に少し登場した翔太くんたちが出ます(笑)なのでまた違った雰囲気を楽しんでもらえたらいいんですが! (2020年12月3日 12時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年12月1日 17時